私的図書館

本好き人の365日

『ファンタージエン・愚者の王』

2006-07-05 01:50:00 | 本と日常
ターニャ・キンケルの『ファンタージエン・愚者の王』を読み終えました☆

ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』をテーマに、ドイツの作家6人がそれぞれに新たなファンタージエンの物語に挑戦しているこのシリーズ♪

一冊目の『秘密の図書館』(こちらは『ネシャン・サーガ』のラルフ・イーザウが書いています*(音符)*)が面白かったので、この本も読んでみたのですが、まさか孔子とか李白の名前が出てくるとは思いませんでした!

始めこそちょっと違和感がないでもありませんでしたが、物語に力があるので、意外と後半は気になりません。
映画『ネバー・エンディング・ストーリー』に出てきた幸せの白い竜ファルコンも東洋の竜っぽかったですしね☆

物語は『はてしない物語』の主人公、バスチアンと同じ時間軸で、ファンタージエンで生まれ育った少女が、やはり”虚無”から故郷を救うため、青い目の猫と空飛ぶ絨毯に乗って、ファンタージエンを旅するというもの。

ファンタージエンの不思議な住人がたくさん登場するのは面白いのですが、少女の内面に視点が置かれているので、冒険物語というよりは、葛藤や成長の物語といった感じ。

一生自分の生まれた村を出ることもなく、母の跡を継いで機織りとして生きていく自分の将来に不満を持つ少女レス。

彼女の望みは、外の世界を自分の目で見ること。

どうして女の子だからって機織りにならなきゃならないの?

誰かの行いを物語としてじゅうたんに織り込む、そんな生活じゃなくて、自分の物語をその手で、その足で、実際に体験したい!

そんな時、ファンタージエン中に虚無の恐怖が広がりはじめ、それに気付いたレスは…

勧善懲悪的な爽快感こそありませんが、不安に揺れ、他人との関係に傷つき悩む主人公の姿には、すごく心に訴えてくるものがありました。

『はてしない物語』の魅力の一部は、確かにこういうところにあるんですよね。
ただの冒険物語じゃない。
今回はそこのところが作者らしい若い感性でよく表現されていたと思います。

読み終わって、ますますエンデの『はてしない物語』の良さが実感できました*(音符)*

一つの物語から様々な形に広がっていく深い魅力が『はてしない物語』にはあるんですよね。

まさに『ネバー・エンディング・ストーリー』☆

このシリーズ、次が楽しみです♪