今回は、夏休みにピッタリ!
十五人の少年が流れついた無人島で、知恵と勇気によって生き抜いていく冒険小説!!
ジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』をご紹介します☆
あなたは最近、知恵と勇気使ってますか?
ヴェルヌといえば、ネモ船長の出てくる『海底二万里』や、『八十日間世界一周』などが有名ですよね♪
中でも子供のために書かれた、この『十五少年漂流記』は、日本では明治時代にすでに日本語に翻訳され、それ以来、たくさんの少年少女、大人たちに受け入れられてきました。
100年以上前に書かれた小説ですが、今読んでも全然退屈じゃありません。
それどころか、大人になって読むと、また新鮮なワクワク感を感じることが出来て、しばし少年の心に戻れました(笑)
秘密基地で遊んだことあります?
あの時のワクワク感に似てます(^^)
「あとがき」によると、ヴェルヌは若い時、自分の書いた原稿をすげなく出版社に突き返され(その時はまだ小説ではなく、飛行船旅行の可能性について真面目に書いたものでした)、怒ってその原稿をストーブの中に投げ込んでしまったのだそうです。
それを火傷の危険をおかして慌てて火の中から拾い出したのが、当時新婚ホヤホヤだったヴェルヌの奥さんで、その原稿を彼女のすすめで他の出版社に送ったところ、何社目かで、「小説に書きなおしてみないか」と言われ、それがきっかけで小説を書くようになったんだとか。
この奥さんがいなかったら、ヴェルヌの名作の数々は、世に出ることも、書かれることさえなかったんです。
そう考えると、つくづく偉大な女性ですよね♪
さてさて、肝心のストーリーです。
この物語に登場する少年たちは、ほとんどがニュージーランドの寄宿学校に通う生徒たち。
上は14才から下は8才まで。
しかも、アメリカ、イギリス、フランスと、出身も様々。
この年齢のわずかな差や、出身の違いが、のちに大きな障害になるのですが、それはもっとあとのお話。
地球の南半球にあるニュージーランドでは、季節が日本とは逆さまなので、夏休みは二月から始まります。
学校に通う生徒のお父さんが、自分の所有する船で、少年たちを夏の船旅に招待したまでは良かったのですが、大人がみんな船を降りているちょっとしたすきに、天の采配か誰かのイタズラか、船を港につないでいたロープがスルスルとほどけてしまい、なんと14人の生徒と、船の使用人である黒人の少年1人を乗せて、船は大きくひろがる太平洋へ!
ここから、十五人の少年の家に帰るまでの長い長い冒険が始まります。
嵐の海で船をあやつる4人の年長の少年たち。
船の中の年下の少年たちをなんとか安心させながら、なんとか船を進ませようとするのですが、子供の力では波に逆らって舵を動かすこともできず、風に流されるまま。
奮戦もむなしく、船は方角もわからない見知らぬ海へと流されてしまいます。
やがて霧の向こうに陸を見つける少年たち。
しかしそこは、誰も住んでいない無人島だったのです。
マストが折れ、傷ついた船から使えるものだけ降ろした少年たちは、この島での生活を余儀なくされます。
洞穴の岩をけずって住まいを作り、鳥やアザラシを捕まえる。
たとえ漂流者になっても、ここでの時間を無駄に過ごさないために、小さい子にはちゃんと勉強を教え、日々の出来事を日記に記録し、選挙によってリーダー、彼らが言うところの大統領を選出する子供たちがとっても真面目☆
大きい子が小さい子を教え、小さい子も自分で出来ることを手伝う。
島や湖に名前を付け、地図を作り、仕事を割り当て、一週間の時間割を決める。
もちろん、遊びや読書、みんなで楽しむ時間も忘れません!
島の生活は確かに厳しいけれど、こうして子供たちによる子供たちだけの共和国が誕生します♪
ところが、どこの集団にも自分が注目されないと我慢できないって子はいるもの。
学校では勉強家の優等生で、父親が地元の有力者ということもあっていばっていたイギリス人のドノバンは、フランス人で同い年のブリアンが何かと活躍したり、アメリカ人のゴードンが年上だからって大統領に選ばれたのが気に入らず、なにかと二人と衝突してばかり。
このドノバンとブリアンの対決、そして少年たちの間で芽生えていく友情も、この物語の大きな読みどころです!
やがて夏の終わりと共につらい冬が訪れ…
様々な困難にさらされ、それでも負けずにじっと春を待つ少年たち。
いつか温かくなつかしい我が家に帰れることを願って…
この冒険が始まってからずっと元気のないブリアンの弟、ジャックが抱える誰にも言えない秘密。
ついに自分の仲間と一緒に、ブリアンたちのもとを出て行ってしまうドノバン。
流れ着いた新たな”大人”の漂流者。
前半は無人島で悪戦苦闘しながら、知恵とと工夫で食べ物や住むところを確保する少年たちの活躍が読んでいて実に楽しいです♪
それなのに後半は一転、少年たちの島に悪い大人たちが流れ着き、なんと少年たちに襲い掛かってくる!
武器を持った大人たちに対し、今度は知恵と勇気で立ち向かっていく少年たち!
手に汗握る攻防が続き、少年たちも頑張るのですが、非情な刃が一人の子供を…
その場面ではありませんが、自分たちの力のおよばないことを口惜しがるブリアンの言葉が印象的です。
「なぜ、僕たちは子供なんだろう。大人でなければならない時に」
そして最後は怒涛の展開!!
果たして少年たちは無事、両親の待つニュージーランドに帰れるのか?
でもいったいどうやって?
改めて読み返してみて、こんなに面白いのかとビックリしました*(びっくり2)*
有名な作品だからってあなどれません。
いま読んでも現代の小説にまったく引けを取りません。
久しぶりに一気に読みました♪
夏休みにも入ったから、子供たちにも読んでもらいたいところですが、あえて、お父さん達に読んでもらいたい!
少年時代の胸躍るあの瞬間に立ち戻らせてくれる、そんな一冊ですよ☆
ジュール・ヴェルヌ 著
波多野 完治 訳
新潮文庫