私的図書館

本好き人の365日

五月の本棚 2 『夜は短し歩けよ乙女』

2007-05-26 00:43:00 | 本と日常
恋する乙女は絵になるかも知れないが、恋する男はある意味不気味である。

そして、たいてい救いがたい阿呆でもある。

しかし、その阿呆な姿に哀愁を感じ、自らの体験と重ね合わせて思わず涙し、力にはなれずとも応援したいと思ってしまう男性諸氏が、この世の中に少なからずいることを私は知っている。

同士諸君。

本書は君たちにぜひとも読んでもらいたい一冊だ!





            ―推薦人心の叫び―


              



さて、今回ご紹介する本は、全国の本屋さんが選ぶ「本屋大賞」で、2007年度2位に選ばれた、

森見登美彦さんの*(キラキラ)*『夜は短し歩けよ乙女』*(キラキラ)*です☆

オモシロオカシイ♪

舞台は京都。

大学生の”先輩”が、クラブの後輩である”彼女”にひと目ぼれし、何とか自分を印象付ようと、彼女の行く先々に姿を現す。

でもその涙ぐましい努力にも関わらず、天真爛漫な彼女は何も気付かない。

「あ! 先輩、奇遇ですねえ!」

スローライフ、スローストーカー。

尊敬する姉から「女たるもの、のべつまくなし鉄拳をふるってはいけません」と教えられ、美しく調和のとれた人生を歩むため、”おともだちパンチ”という奥の手を身に付けた彼女。

お酒をこよなく愛する彼女は、謎の老人李白氏と”偽電気ブラン”の飲み比べをしたり、錦鯉の養殖業者で春画収集家のエロオヤジの人生論に耳をかたむけたり、美人で酔うと人の顔を舐める歯科衛生士や、いつも浴衣姿のひょうひょうとした男なんかと知り合いになりながら、学生生活に新たな人生の喜びを見つけていきます。

屋上に竹やぶの生えた三階建ての電車の中には銭湯もある。

空から林檎が降って来て芽生えたパンツ総番長の恋。

暗躍する閨房調査団の面々に、盛り上がる詭弁論部。

古本市の神様。

所かまわず上演されるゲリラ演劇「偏屈王」

転がる達磨(ダルマ)に象の尻。

果たして先輩と彼女はくっつくことができるのか?

先輩のとてつもなく遠大な計画、通称「ナカメ作戦」(なるべく彼女の目にとまる作戦)はうまくいくのか?

パンツ総番長はなぜパンツをはき替えない?

舞い散る春画。

韋駄天コタツ?

そして「偏屈王」の正体は?

…あぁ、自分で書いていて何書いているのかわからなくなってきた。

一人の男が一人の女に恋をした。
それだけなのに、それだけじゃない。

後輩に思いを寄せる先輩の一途さ(?)を、笑いながらも心でもらい泣きした男性諸君は必ずいるはず!

後輩の女の子も、ここまでくると悪魔でも天使でもどっちでもいい!
友達から始めて下さいとお願いしたくなってしまう!

魅力的な文章。
破天荒で破顔一笑の展開!
それでいて心に残るほんわかとした温もり。

本屋さんがオススメしたくなる気持がよくわかります☆

若者が若者らしく、中年はしぶとくひねくれ、老人は闊達に笑う。
登場人物みんなが生き生きとしていて、何だかこの世界じゃ登場人物が作品を楽しんでいるみたい♪

これは読まないとわからない面白さです♪♪

自覚もなしに我が道を行く後輩の女の子は必見です!!

先輩の内面と、彼女の目に映る先輩の姿が微妙に違うところにもご注目。

男は好きな相手には見せないところがたくさんあるんですよ♪

何にも増して、作者の読ませるうまさに脱帽です☆













森見 登美彦  著
角川書店