2011年3月11日に起きた東日本大震災。
被災地ではライフラインはもちろん、交通網がズタズタになったことで本や雑誌の流通も止まってしまいました。
多くの人が亡くなり、家を無くし、住む所も食べる物も不足している状況で、被災地の本屋さんの多くは、こんな時に本を読む人なんていないだろう、と思ったそうです。
それでも床に落ちた本の山を片付け、本棚をおこし、なんとかお店を再開すると、思ってもみないことが起こりました。
多くの人々が詰めかけたのです。
みんな活字と情報に飢えていました。
ある本屋さんは、顔見知りの人から「お店はいつから開けるの?」「子どもたちが怖がっちゃって、絵本やマンガを読ませてあげたいのよ」といわれたことがきっかけで、こんな時だからこそ、町の本屋にできることがあるんじゃないかと思ったそうです。
しかし、お店を開けても新しい雑誌や本は入ってきません。
毎週楽しみにしていたマンガ雑誌が無いと知り、泣き出す子供もいたそうです。
そんな時、なじみのお客さんの一人が1冊の「少年ジャンプ」をお店に持ち込みます。
「みんなに読ませてあげて下さい」といって。
そのお客さんは交通事情が最悪の中、わざわざ遠くの街まで行ってその雑誌を買い求めて来たそうです。
その日から、「ジャンプあります」の貼紙を見て、多くの子供たちが本屋に押しかけました。
1冊の雑誌を、みんなで回し読みするのです。
大人もやってくるようになり、お店の前には長い行列ができました。
「子供がやっと笑ってくれた」と、お礼をいって帰られるお母さんもいたそうです。
…本の力ってすごいですね。
それは同時に、人間の力ってすごいってことでもあり、一人の善意がこんなにもつながって、多くの人に広がっていったことを知ると、なんだか勇気もわいてきます♪
一冊の本。
だけど、かけがえのない出会い。
川上徹也さんの本、『本屋さんで本当にあった心温まる物語』(あさ出版)を読みました。
この「一冊のジャンプ」というお話の他に、全部で28の本屋さんを舞台にした”本当にあった物語”が収められています。
お父さんに買ってもらった一冊の絵本をいつまでも大切にしている女の子。
本屋さんでみかけたキレイなお姉さんに憧れる男子学生。
町に本屋が無くなってしまい、何とかしようと頑張る町の主婦たち。
本を万引きした少年に、次々とお説教するおせっかいなお客さんたち。
本屋さんで出会った一冊の本がきっかけで、いまの職業に就いたという女性。
本好きじゃなくても思わず心がほっこりする物語の数々。
どれも登場するのは普通のどこにでもいそうな人々だけれど、どの人にもそれぞれの輝くような物語があるんです。
ショッピングモールで幼い女の子が迷子になり、両親は必死で探し回ります。
館内放送までかけてもらって、警備の人にも手伝ってもらって、でも女の子は見つかりません。
その時、母親は急に走り出します。
彼女だけに、娘の声が聞こえたそうです。
女の子は、ショッピングモールの本屋さんで、お店のお姉さんに絵本を読んでとせがんでいました。
お姉さんの読むお話に目を輝かせ「キャハハハ」と無邪気に笑っていたそうです。
両親は安心したあまり床にへたりこみ、本屋のお姉さんは突然のことに驚き、とりあえずホッと胸をなでおろす大人たち。
そんな大人たちを尻目に、女の子は「次はこれ!」と次に読んでもらう絵本を探しに行ったそうです(苦笑)
「〇〇ちゃんは本を読んでいる時に話しかけてもぜんぜん返事してくれない」
とその女の子は成長してからも友達にいわれるんだとか(笑)
本が好きなのはすご~くよくわかるけれど、あんまり夢中になるのも考えものですね☆
読んでいるこっちは面白いけれど♪