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本好き人の365日

九月の本棚 2

2003-09-15 00:01:00 | 家庭小説
いかなる環境に置かれようとも、人は、それに打ち勝つすべを生まれながらに持っている。

そうありたいと思い、そうであって欲しいと願うあなた。

今回は、そんなあなたに送るとっておきの物語。
ジーン・ポーター第二段。

家庭文学の近代古典『リンバロストの乙女』をご紹介します☆

父をリンバロストの沼で失い、それ以来いささかの愛情も示してくれない母と二人で森と共に暮らしてきた主人公のエルノラ。
町の高校に行き、勉強したいと切に願う彼女は、母親の反対をなんとか押し切り、念願の登校初日を迎えます。ところが、始業式の会場に立ったエルノラは呆然とします。

「これはなにもかも間違いなのだ。これは学校ではなく、蝶結びにした大きなリボンの大展示会なのだ。」

よい匂いをさせて、鳥や花とみまがうばかりのはでやかな装いをした、幸福そうな若い少女たち。対して自分は、丈の長い褐色の更紗の服に、重い革のドタドタした長靴。古ぼけた帽子に幅の狭いリボン。

エルノラの田舎じみた格好は、たちまち好奇の目にさらされ、彼女は恥ずかしさのあまり思わず天に祈ります。
「神さま、あなたの翼の蔭にあたしをかくして下さい」

こういう身の置き場のない、いたたまれない気持ち、わかります。
私も中学生の時に、床屋で変な髪形にされた時は、真剣に学校休もうかと考えましたもん☆

そんなエルノラに、さらに追い討ちをかけるように、授業料や教科書代などで、たくさんお金が必要なことが知らされます。エルノラの家はけっして貧乏というわけではないのですが、最愛の夫を沼で失ってからというもの、心を失ったかのように娘につらくあたる母親が、お金を工面してくれる希望はほとんどありません。

だけどエルノラはあきらめません。母からの援助が期待できない以上、彼女は自分の力で、この困難を乗り越えようとします。

こうしたエルノラの奮戦が、前半の見どころなのですが、こんな大昔から女子高生ってお金がかかったんですね。
通学で使うギンガムや麻の服に、色とりどりの髪リボン。洗髪用石鹸に爪みがき、コールドクリームなどの化粧品。革のベルトにハンカチ、帽子に靴下、散歩用の短靴。お弁当箱。

極めつけはグループ内のお茶会。

仲の良い友達同士が、順番に高価なお菓子やアイスクリーム、熱いチョコレートなどをおごるのだけれど、もちろんエルノラにそんなお金はない。

ここからが我等がエルノラの真骨頂。

楓糖でかため、ぶなの実をふんだんにちりばめた、はぜとうもろこし。砂糖をかけたヒッコリーの実の心。暖かなかぼちゃパイに、香りのよいドーナッツ。熟し切った赤いさんざしの実に、こうばしい大きなあけびの実。シュガー・ケーキに口の中で広がる香料入りの梨。大切な友達との付き合いのために、泣き言もいわず、自然からの贈り物をせっせと集めるエルノラ。
そのもてなしは大好評で、少女達が金切り声をあげて突撃するほど♪

こうした健気でがんばり屋のエルノラに、ジーン・ポーターは次から次へと無理難題を押し付けます(笑)

もう、ちょっとはそっとしておいてやってくれ! と思わず叫びたくなるほど。かわいそうな子供に自分のお弁当を全部あげてしまうエルノラ。ところが、次の日には子供は三人に増え、その次の日には昨日の三人に加えてなんと大きな犬まで(笑)

礼拝式の当日になって、頼んでおいた新しい服がないことに途方に暮れるエルノラ。後半は、婚約者のいる優しい青年がエルノラの前に登場したりして、さあ大変!

この続きは次回で紹介しましょう。
この本、角川文庫版だと、上下二冊にわかれているので、紹介も二回にわけて…なんて、まだまだ書き足りないだけなんですけどね。
なんてったってこの物語、とってもお気に入りなもんで☆









ジーン・ストラトン・ポーター  著
村岡 花子  訳
角川文庫


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