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本好き人の365日

三月の本棚 『可愛いエミリー』

2004-03-12 19:08:00 | モンゴメリ
今回は、ルーシー・モード・モンゴメリの『可愛いエミリー』という本の紹介です。

のっけからなんなんですけど、…この題名、もう少しなんとかならないものですかね、訳者の村岡花子先生。

男友達に薦めにくいったらなくて…(笑)

もともとの題名を直訳すると、「ニュー・ムーン農園のエミリー」

うん、確かに「可愛いエミリー」の方がまだいいかな。(なにを生意気な!)

「グリーン・ゲイブルズのアン」を「赤毛のアン」にしたのは有名な話。名訳ですよね☆

この物語。
「可愛いエミリー」から始まる三部作をエミリー・ブックスと呼びますが。三年もかかってようやく出版社を見つけ、なんとか「赤毛のアン」が出版された1908年から、さらに六年後。「アン」が認められ、成功を収めたモンゴメリが、1914年から1929年の間に書いた五冊の小説の中の三冊にあたります。同時期に書かれた「アンの愛情」「アンの夢の家」と比べてみるのも面白いですよ♪

さて、物語は、幼い時に母親を亡くしたエミリーが、父親と、最後の二週間を過ごすシーンから始まります。

「勇気を持って生きなさい。…世の中は愛で一杯だ…」

最愛の、そして唯一の理解者である父を失い、母方の親戚に引き取られることとなったエミリーは、その言葉を胸に、古いしきたりと伝統が支配するニュー・ムーン農園で、新しい生活を始めます。

プリンス・エドワード島の豊かな自然の中で、その小さい瞳ですべてをとらえようとするエミリー。
木々や小道に名前を付けるところなんか、「アン」とも共通するところがあります♪

風のおばさん失望の家鏡の中のエミリーモンゴメリは猫の名前を付けるのも天才的☆

ソーシー・ソールにスモークにバターカップ♪

なんて魅力的なんでしょう。
けれど、「アン」と大きく違うところは、エミリーがどんな時でも書き続ける少女だということ。

孤独で、夢みがちなエミリーは、それはもう、何かに急かされているみたいに、紙切れの裏に、買ってもらったノートにと、必死になって鉛筆を走らせます。

父親への手紙。
ニュー・ムーンの伯母達のこと。
そして《ひらめき》が訪れた時に書き綴った詩。

大人達はそんなエミリーを”変わった子”とみなしますが、エミリーはひるまず書き続けるのです。

エミリー達の通う学校に赴任してきたカーペンター先生に、彼女の書いた詩を見せるように言われた時も、エミリーは訴えます。「もちろん、あたしやめませんわ」「だって、あたし書かないでいられないんですもの。」

エミリー・ブックスが「赤毛のアン」よりも作者モンゴメリの内面をよく表しているといわれるのは、この書くことに対する執着です。


「もし君が生まれつき、登らなければならないのなら、そうするほかはない。世の中には、丘に眼をあげなければならない人間がいるものだ。そういう人間は、谷間では息ができないのだ。」


子供らしい失敗と、大人達との衝突の中、エミリーはかけがえのない友達と、数少ない理解者を得て、アルプスのようにそびえる、その険しい道を登ることを決意します。

詩人か物語作家になることを夢見る少女、エミリーの苦難と試練、そして愛情に満ちた物語。

では、この続きは次回『エミリーはのぼる』でご紹介しましょう☆

それぞれの夢にむかい、今もアルプスの峰に挑戦している多くの人々に、ぜひこの作品をお薦めしたいです。特にモンゴメリと同じく物書きを目指している方。きっと、なにかの道しるべになるんじゃないかな?












ルーシー・モード・モンゴメリ  著
村岡 花子  訳
新潮文庫


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