◎小川圭助さんの文章・俳句に対する批評(『警察作文の作り方』より)
昨日のコラムで紹介した杉並署・小川圭助さんの「民衆と警察」と題する文章について、『警察作文の作り方』(一九四九)の著者・福馬謙三は、次のように批評している。
批評
すらすらと書かれてゐる。一体に警察官の文章には不慣れな言葉や堅苦しい言葉が非常に沢山飛出すのであるが、小川氏の文章には、それがないので気易く読めるのである、俳句の気持はわかるが、俳句としてはなつていない。
小川圭助氏の文章に、「不慣れな言葉や堅苦しい言葉」がないというのは、その通りだが、ではこの文章がすぐれた文章かと言えば、そうでもないような気がする。主張が平板で、訴えてくるものがない。
むしろ小川氏の文章で、見るべきものは、「警邏線夜寒や背に治安維持」という俳句ではないのか。福馬謙三は、これについて、「俳句としてはなつていない」と切って捨てたが、警察官でなくては作れない、実感のこもった俳句と見るべきではないだろうか。なお、「夜寒や背に」は、〈ヨサムヤセナニ〉と読むのであろう。
また、小川氏の文章中の「職務に任いて」の「任いて」は、〈ツイテ〉と読ませようとしたものか。「気しきう」は、多分、「気しやう」(気性)の誤植、「石杖」は「礎」の当て字であろう。
「気しきう」といった誤植があるところから、おそらく、この小川氏の文章も、すでに一度、活字化されていたものだったと思われる。
【5月31日のクイズの正解】 3 1948年度 ■警察法(旧警察法。昭和22・12・17、法律第196号)が施行されたのは、1948年3月6日(1947年度)、その翌年度と考えますと、1948年度ということになります。