礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

馬場辰猪の『日本文典初歩』(1873)について

2013-06-19 09:32:16 | 日記

◎馬場辰猪の『日本文典初歩』(1873)について

 馬場辰猪が英文で書き、ロンドンで出版した『日本文典初歩』(一八七三)は、『馬場辰猪全集 第一巻』(岩波書店、一九八七)に収められている。
 ただし、英文のままであって、序文のみ、日本語訳が付されている。同全集の解題には、次のようにある(解題の執筆者をメモしてこなかったので、後ほど補う)。

An Elementary Grammer of the Japanese Langage,with Easy Progressive Exercises(London:Trübner & Co.,1873) 馬場の第一回目の英国留学期、一八七三(明治六)年秋に、ロンドンのトゥリュブナー社より刊行された単行本で、価格は五シリングであった。本全集にはこの初版本を収録した。原本の判型は縦一九センチ、横一二・五センチで、この初版本は管見の限り、日本国内では国立国会図書館、大久保利謙氏、仁田義雄氏が所蔵されている。本書には目次はなく、序文九頁、本文九二頁からなり、本文のうち最初の二八頁が日本語文法、残りの六四頁が日英両語対照の練習問題一〇〇題にあてられている。また本書は、当時の社会科学協会会長であったホートン卿(load Hougton即ちRichard Monckton Miles,1809‐85)に献呈されており、ホートン卿からの礼状は安永梧郎『馬場辰猪』(東京堂、明治三〇年刊、みすず書房復刻版、昭和六二年)の巻頭に掲載されている。
『日本語文典』あるいは『日本文典初歩』とよばれている本書執筆の最大の動機は、一八七三年にニューヨークで出版された米国駐在代理公使森有礼の編纂になる『日本の教育』(Education of Japan:A Series of Letter,New York:D.Appleton & Co.,1873)にあった。馬場は序文において、森が主張した「英語採用論」に対し、日本語はいくつかの点において不完全ではあるけれども、普通教育の基礎を教えるためには十分有効であることを、「英語採用論」の弊害にも言及しながら、批判している。馬場の「自伝」(本全集第三巻に収録)によると、馬場は昼間弁護士協会で法律の勉強を終えてから、ハーリントン・スクエア二○番地の下宿に戻り、毎晩一頁ずつこの『日本語文典』を書きすすめていったという。
 馬場の批判の対象となった『日本の教育』は大久保利謙編『森有礼全集』第三巻(宣文堂、昭和四七年)に収録されており、また同全集第一巻には馬場の『日本語文典』初版序文も収録されている。【以下略】

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