◎非常号砲とは宮城内守備隊が発する五発の号砲
昨日の続きである。小冊子『警視庁非常警備規程 警戒規定』を紹介している。本日は、同冊子から、「警視庁非常警備規程」の最初の部分と末尾の部分を紹介してみたい。
引用は、基本的に原文の通りだが、漢字は現行のものに直し、また、カタカナには、適宜、濁点を加えてある。なお、〔 〕内の注は、もとから原文にあった注である。
警視庁非常警備規程
第一章 通 則
第二章 警備計画並準備
第一節 本 庁
第二節 警察署
第三章 参集及召集
第四章 部隊編成
第五章 警備実施
第六章 報告連絡
警視庁非常警備規程
第一章 通 則
第一条 災害騒擾其ノ他非常変災（以下単ニ非常変災ト称ス）ノ際又ハ非常号砲（宮城〈キュウジョウ〉内守備隊ニ於テ発スル五発ノ号砲）若ハ御近火号砲（同上三発ノ号砲）アリタル場合ハ本令ニ依リ非常警備を実施ス
第二条 本令ニ於テ非番員ト称スルハ本庁並警察署勤務ノ警察官吏ニシテ左の各号ノ一ニ該当スル者ヲ謂ヒ当務員ト称スルハ非番員ニ非ザル者ヲ謂フ
一 三部勤務員及隔日勤務員ノ非番ニ相当スル者
二 三部勤務日勤員及毎日勤務員（駐在巡査ヲ除ク）ニシテ勤務時間外ノ者
休暇公休其ノ他欠勤中ノ者ハ本令ニ於テハ非番員ト看做ス
第三条 警察官吏居住ヲ定メタルトキハ即日書面ヲ以テ第十七条各号ノ事項ヲ受持巡査派出所又ハ同駐在所ヲ経由シ居住地所轄警察署長ニ届出ヅベシ其ノ届出事項ニ異動ヲ生ジタルトキ亦同ジ
第二章 警備計画並準備
第一節 本 庁
第四条 官房主事部長ハ第三十三条ニ定ムル主管事務執行ニ関シ処務内規ヲ定メ警務部長ニ通報スベシ之ヲ変更シタルトキ亦同ジ
第五条 官房主事部長及警察練習所長ハ第二十一条ニ定ムル各号非常召集ニ依リ召集シ得ベキ警察官吏ノ人員ヲ別記第一号様式其ノ他ノ職員ニ在リテハ第一号様式ノ二ニ依リ作成シ警務部長ニ送付スベシ之ニ異動ヲ生ジタルトキ亦同ジ
第二節 警 察 署
第六条 宮城周囲ノ所轄警察署ハ非常変災ノ際又ハ御近火号砲ノアリタルトキノ警備ニ関シ各場合ニ付関係警察署長ト連絡ヲ執リ左ノ各号ノ事項ヲ計画シ置クベシ
一 警備要員及不足員数
二 当務員ニ依ル当面ノ警備方法
三 非番員参集又ハ応召後ニ於ケル警備方法
四 応援員到着後ニ於ケル警備方法
五 非番員ノ召集又ハ参集ノ場所
第七条 大宮御所（赤坂離宮及青山御所ヲ含ム）及各皇族王族公族邸周囲ノ所轄警察署長ハ非常変災ノ際又ハ非常号砲アリタル場合ノ警備ニ関シ前条ニ準ジ計画シ置クベシ
第八条 警察署長ハ（以下単ニ署長ト称ス）ハ管内重要警備対象物ヲ左ノ区別ニ従ヒ調査シ別記第二号様式ニ依リ各号毎ニ別冊トシテ編綴保存シ異動アル毎ニ加除訂正シ置クベシ
一 人
顕官貴顕及大臣礼遇者
著名ナル政治家実業家等
本邦駐箚〈チュウサツ〉外国大公使及領事
其ノ他必要ト認ムル人
二 物
左ノ該当物体ニシテ重要ナルモノ若ハ重要ナル部分
御陵離宮御苑
官 公 署
大神社仏閣
大公使館領事館
要警備人邸宅（官邸私邸別邸等）
上水道施設（取入口浄水場給水場地上ニ露出シタル主要送水管）
電力施設（発電所変電所地上ニ露出シタル六六、〇〇〇ヴオルト以上の架空電路等）
瓦斯施設（製造所貯槽等）
銃砲火薬類等製造所並火薬類貯蔵所
工場及事業所
鉄道（地方鉄道及軌道ヲ含ム）（停車場車庫鉄道隧道等）
港湾施設（海港連絡輸送設備通航上重要ナル箇所）
通信施設（郵便局電信局無線電信所其ノ他ノ通信所及通信回線上重要ナル箇所）
大倉庫（地坪三〇〇平方米〔約九十一坪〕以上ノモノ）
危険物大量貯倉所
卸 売 市 場
取 引 所
銀 行（本店及主要ナル支店）
教育研究機関（官公私立専門学校以上ノ学校及科学研究所等）
大 百 貨 店
大会社（大保険会社大信託会社等）大商店（大百貨店ニ準ズルモノ）大ホテル大社交倶楽部其ノ他
大 建 築 物
大劇場（大活動写真館ヲ含ム）
新 聞 社
政 党 本 部
乗合自動車車庫
飛 行 場
其ノ他必要ト認ムル物体
三 地 域
重要官公衙地域
経済中枢地域
重要工場地域
重要港湾地域
其ノ他必要ト認ムル地域
【中略】
附 則
第五十条 本令ハ昭和八年十二月一日ヨリ之ヲ施行ス
第五十一条 消防署ノ非常警備ニ関シテハ非常時火災警防規定ノ定ムル所ニ拠ル
第五十二条 大正十四年四月訓令甲三十三号非常警備規定ハ本令ノ実施ノ日ヨリ之ヲ廃止ス
第二章「第二章 警備計画並準備」第二節「警察署」は、第一八条まであり、そのあとに第三章（第一九条～第三一条）以下、第四章（第三二条～第三六条）、第五章（第三七条～第四三条）、第六章（第四四条～第四九条）と続く。しかし、第九条から第四九条までは、すべて割愛した。
