礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

非常警戒員は戎手など護身用具を携帯せよ

2017-11-07 05:44:12 | コラムと名言

◎非常警戒員は戎手など護身用具を携帯せよ

 小冊子『警視庁非常警備規程 警戒規定』を紹介している。本日は、同冊子から、「非常警戒従事員ノ心得」を紹介してみたい。個人的には、この文書が、同冊子の中で最も興味深い。
 引用は、基本的に原文の通りだが、漢字は現行のものに直してある。句読点は、原文のまま。段落の最後に句点(マル)があるほか、数箇所で読点(テン)が使われている。カタカナは、濁点が施されているものもあったが、徹底していなかったので、適宜、これを加えた。〔 〕内は、引用者による注である。
 文中、「戎手」というのは、あまり見かけない言葉だが、文脈から判断すると、「十手(じって)」のことであろう。

   非常警戒従事員ノ心得
非常警戒又ハ密行警戒ノ主タル目的ハ穏密〔ママ〕ノ間ニ犯罪ノ予防並検挙ヲ為スニアリ而シテ其ノ方法タルヤ警戒ノ目的ニ依リ多少ノ差異アリト雖〈いえども〉通常指定セラレタル一定区域ヲ密行シ或ハ要所張込ヲ為シ而シテ通行者ニ対スル不審尋問ヲ励行シ又ハ空家〈あきや〉神社仏閣其ノ他犯人ノ潜伏スル疑〈うたがい〉アル場所等ヲ検索シ不審者ノ発見ニ努ムルモノトス以下此種警戒従事員ノ特ニ注意スベキ事項ヲ(一)服装並携帯品、(二)張込、(三)密行、(四)、不審尋問、(五)被疑者同行、(六)報告連絡(七)応召及警戒引揚時ノ注意ノ各項ニ分チ之ヲ説明スべシ。
服装並携帯品
(1)私服ニテ密行其ノ他ノ警戒ニ当ル場合ハ軽装トシ人目ヲ惹ク服装ヲ避クルコト
理 由
私服ニテ密行其ノ他ノ警戒ニ当ルハ穏密ノ間ニ犯罪ノ予防並〈ならびに〉検挙ヲ目的トスルモノナルガ故ニ能フル〈あたうる〉限リ軽装トシ敏活〈びんかつ〉ナル行動ヲ執リ得ルト共ニ人目ヲ避クル服装ヲ選バザルべカラズ故ニ其ノ服装ハ季節又ハ土地ノ状況ニ依リ之ヲ異ニスト雖二重廻〈にじゅうまわし〉「ドテラ」ノ類又ハシ白地ノ浴衣〈ゆかた〉同洋服等ハ絶対ニ之ヲ避クルヲ要ス。
(2)戎手其ノ他強靭ナル護身用具及照明用具ヲ携帯スルコト
理 由
私服ニテ密行其ノ他ノ警戒ニ当ル場合ハ制服ノ佩剣〈はいけん〉ニ代ルべキ護身用具ヲ必要トスルハ論ヲ俟タズ又不審者ノ容貌服装、携帯品ノ検分及検索等ノ為ニ照明用具ヲ必要トスルコトモ之亦贅言〈ぜいげん〉ヲ要セズ而シテ其ノ護身用具ハ細身ノ洋杖〔ステッキ〕ノ如キ実用ニ適セザルモノ、人目ヲ惹クガ如キ鉄棒ノ類〈たぐい〉又ハ携帯ニ不便ナルモノ等ヲ避ケ戎手又ハ強靭ナル洋杖ノ類ヲ携帯スルヲ適当トシ照明用具ハ光度ノ適当ナル懐中電灯ノ類ヲ携帯スルヲ最モ便トス。
(3)履物ハ歩行ニ便ニシテ音響ヲ発セザルモノヲ選ブコト
理 由
歩行ニ不便ナルモノ又ハ音響ヲ発スル履物ヲ穿ツ〈うがつ〉トキハ犯人ノ追跡等ニ際シ敏活ナル行動ヲ執リ得ザルト共ニ警戒員ノ存スルコトヲ他ヨリ感知セラルヽ虞〈おそれ〉アリ故ニ履物ハ護謨足袋〈ごむたび〉草履〈ぞうり〉又ハ護謨底靴〈ごむぞこぐつ〉等歩行ニ便ニシテ且音響ヲ発セザルモノヲ選ブヲ最モ適当トス。
(4)官品ノ携帯ト若干ノ金銭ノ所持トヲ遺忘セザルコト
理 由
手帳、警笛、捕縄、名刺及認印〈みとめいん〉ノ携帯ヲ要スルハ其ノ勤務ノ性質上当然ナルヲ以テ必ラズ出勤前一応之等ノ物品携帯ニ付遺漏ナキヤ否ヤヲ検スルノ要アリ又金銭ノ所持ヲ必要トスル所以ハ勤務中如何ナル事情ニ依リ金銭ヲ必要トスル場合ナキニアラザルガ故ナリ例へバ突然出張ヲ命ゼラレ又ハ犯人追跡等ノ為自動車其ノ他ノ交通機関ヲ利用スルノ要アル場合等ノ如シ。【以下、次回】

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