福田美術館での二人の絵師の腕比べの続きです。
今回のお題は《龍と鶴》です。木造建築に一番恐ろしいのが勿論火災です。火消の龍を天井に描く事に依り大切な建造物が燃える事が無いように祈って描いた先人たちです。特に著名な狩野探幽により描かれた妙心寺の法堂の鏡天井雲龍図」です。古社寺の天井画 “雲龍図” 龍は仏法を守護する事で名を轟かせています。神社や寺院を訪れると出会うことができる多彩な龍の装飾の中にあって一番最初に気が付くのは手水舎かもしれません。
龍が仏教の守護神であることは、『法華経』に伝えられています。「八大龍王」と呼ばれ、観音菩薩の守護神として、古くから人々の信仰を集めてきました。
「龍は、仏教の守護神であると同時に水を司る神としても知られているため、火事から建物を守る意味から天井画に龍が描かれるようになったとされています。とくに、私たち臨済宗を象徴する『法堂(はっとう)』という、説法を受ける建物がありますが、その建物に龍の天井画が描かれています。妙心寺のそれは、円相に龍が描かれ、周囲に雲が渦巻く図。円は禅においての悟りの世界である「無」や「空」を表したものです。手がけた狩野探幽は、この画を完成させるまで3年修行に通い、5年間かけて描きました。最後に探幽が眼を入れると、法堂の周囲に雲が立ち込め雨が降ったという逸話が残ります。私たちにとっては当たり前のようにある画ですが、年に3回、法堂で行われる修行の際には、存在を強く感じています」(家庭画報 . com の大本山妙心寺から部分引用しました。)
1 円山応挙 雲竜図 紙本墨画 軸装 1784年制作です。
2 曾我蕭白 雲龍図 紙本墨画 軸装 18世紀です。
〇 次からは鶴です。
3 円山応挙 海辺群鶴図 絹本墨画淡彩 軸装 1784年制作です。
《ありえない風景も応挙の手に掛かればリアル》
描かれている9羽のタンチョウのうち、頭頂部が赤い7羽は雄、一回り小さく全身黒毛で覆われた2羽は子供の鶴です。丹頂は海で餌を探すことはありませんが、松や砂浜と組み合わせすることで、吉祥の画題をまるで現実の風景であるかのように描いています。(掛軸の隣の解説文からの引用です。)
4 曾我蕭白 粟に鶴図 絹本墨画淡彩 軸装 18世紀
《大きな声が聞こえてきそう》
鶴が頚をのばして振り返り、大きく口を開けて鳴いています。番で描かれることが多い鶴が、この作品では一羽しか描がれていません。この鶴は画面の外にいるもう一羽を呼んでいるのでしょうか。後ろには粟の葉と穂が描かれ、粟の濃淡を活かして遠近感が巧みに表現されています。(掛軸の隣の解説文からの引用です。)
99