雨宮智彦のブログ 2 宇宙・人間・古代・日記 

浜松市の1市民として、宇宙・古代・哲学から人間までを調べ考えるブログです。2020年10月より第Ⅱ期を始めました。

本と映像の森70 吉本哲郎さん著『地元学をはじめよう』

2010年08月11日 05時02分45秒 | 本と映像の森
本と映像の森70 吉本哲郎さん著『地元学をはじめよう』岩波ジュニア新書609,岩波書店、2008年11月20日第1刷、213ページ、定価780円+消費税

 吉本さんは、あの水俣市で長く市職員をつとめた方です。
 もちろん「地元学」というのは水俣市の特殊な話ではないのですが、一般的な、特定のン場所のない「地元学」はありません。
 そういう意味で、水俣市の「地元学」と浜松市の「地元学」は違うと思います。

 この本で、吉本さんは「調べる心がけとまなざし」について書いています。
 「調べるこころがけ」
 ① 現場に出かけて調べる
 ② 外の人たちといっしょに調べる
 ③ 先入観を捨てて聞く
 ④ 対等の立場で聞く
 ⑤ 意見ではなく、じっさいにやっていることや使っている物などについて聞く
 ⑥ 話しやすい場所を選ぶ
 ⑦ あたりまえに住んでいる人が第1流の生活者だと思って聞く
 「まなざし」
 ① つなぐ 例:海と川と山をつなぐ
 ② 重ねる 例:古い道と神社お寺などを重ねる
 ③ はぐ 例:あたらしいものをはぐと古いものが出てくる

 あの水俣病のことをどう考えるかです。
 「1990年から、水俣では壊れてしまった人々のきずなを回復しようと「もやいなおし」が始まりました。「もやう」とは、船の元綱をしっかり結びあうこと、それと共同してことにあたること2つの意味があります」(p90)

 そのなかで対立していた患者と市民ともおたがいに学びあっています。
 水俣を撮影してきた映画監督の土本典明さんは「人は絶望とうらみだけでは生きられない。でも、水俣は違った」と言っています。
 吉本さんは、それに重ねて「このことばで私は、みんなとやってきたことは、水俣に生きる希望をつくってきたことだと気づいたのです。」(p8)と述懐しています。
 そうなんですよね。
 ぼくと仲間達は、浜松に生きる希望をつくってきた、そう思います。

 そして水俣病患者の杉本栄子さんは「あまりにもいじめがひどいので「いじめ返しをしたい」と父親に言ったら「するな、今はいじめているけど、昔はよか人だった。網元は木を大切にして、水を大事にして、人を好きにならんとできんぞと言われた。父親のいいつけを守るのは難しかったけど、他人様は変えられないから、自分が変わることにした。」

 すごく胸に落ちることばです「他人様は変えられないから、自分が変わることにした」

 そして「生活博物館」指定という、「そこに住むほこり」、そういうものを浜松でもと思います。
 
 (注)「取り戻し、よみがえらせ、輝かせたい」ということばは、静岡県の平和運動史のなかのスローガンからお借りしました。ありがとうございます。