本と映像の森 237 中山七里さん著『さよならドビュッシー 前奏曲』宝島社文庫
前に紹介した中山七里さん著『さよなら ドビュッシー』の「次作」で「前編」で、短編集です。
つまり「さよならドビュッシー」の後に書かれた作品ですが、時系列では「さよならドビュッシー」に接続するわけです。
主人公は、なんと「さよならドビュッシー」の「おじいちゃん 香月(こうづき)玄太郎」さんで、建築会社社長で名探偵として難事件を解決していきます。語り手は「さよならドビュッシー」にも登場した介護士の綴喜(つづき)みち子さんなのも嬉しいですね。
中山七里さんの小説は、主人公たちのまっとうな人格と残酷な現実へのリアルな批判から成り立っていて、主人公たちに共感しながら読むことができます。たんなる「名探偵小説」では、ありません。
最初の「要介護探偵の冒険」は、新築の家で起きた密室殺人事件。
「要介護探偵の生還」は、脳梗塞で倒れた玄太郎さんが病院でリハビリをしながら事件を解決します。
「要介護探偵の快走」は玄太郎さんが車椅子競争と老人問題がらみの名推理で、肉体的にも精神的にも冴えを見せます。
「要介護探偵と四つの署名」は銀行強盗の場に立ち会った玄太郎さんの若者への名説教と名推理がすごいです。
最期の「要介護探偵最期の挨拶」は「さよならドビュッシー」の「あの日」の事件です。しかも、あの若きピアニストで名探偵の岬洋介さんが、玄太郎さんの経営するマンションに入居、青酸カリで毒殺れた被害者が音楽マニアなので玄太郎さんから相談を受け というなんとも嬉しい展開です。まだ「本編 さよならドビュッシー」を読んでない方は、こちらを先に読んでから本編を読んでも十分楽しめます。こちらは「さよなら」の前という設定なので、ネタバレはありませんから。
岬洋介さんが活躍する「おやすみ ラフマニノフ」も推奨。
なお「さよならドビュッシー」は来春、映画化されるので、いったい、どんな映画になるか楽しみです。