新・本と映像の森 110(詩1) 宮沢賢治「岩手軽便鉄道の一月」
ボクの大好きな宮沢賢治さんの冬の詩です。「軽便鉄道」は、浜松にはボクが小学生の頃まで走っていました。
こういう雪の風景は、ここでは見れません。
岩手軽便鉄道の一月
(作品第403番、『春と修羅 第三集』)
一九二六、一、一七、
ぴかぴかぴかぴか田圃の雪がひかってくる
河岸の樹がみなまっ白に凍ってゐる
うしろは河がうららかな火や氷を載せて
ぼんやり南へすべってゐる
よう くるみの木 ジュグランダー 鏡を吊し
よう かはやなぎ サリックスランダー 鏡を吊し
はんのき アルヌスランダー 鏡鏡鏡鏡をつるし
からまつ ラリクスランダー 鏡をつるし
グランド電柱 フサランダー 鏡をつるし
さはぐるみ ジュグランダー 鏡を吊し
桑の木 モルスランダー 鏡を……
ははは 汽車(こっち)がたうたうなゝめに列をよこぎったので
桑の氷華はふさふさ風にひかって落ちる