新・本と映像の森 147 幸村誠『プラネテス 1~4』モーニングコミックス、講談社
発行2001年~2004年。
SFマンガ。第1巻で、2074年、宇宙のゴミ(デブリ)掃除をしている3人組から物語は始まる。
日本人ハチマキと、6年前妻を宇宙で失ったユーリと、女性船長フィー。最近、これを原作に創られたアニメを見たばかりだ。
マンガ版では3人はポンコツ宇宙船「DS-12 トイボックス」に乗る零細業者的存在であって、マンガでは3人の仕事以外の会社や待機場所での描写など出てこない。
ところがアニメ版では、3人は巨大宇宙企業の最下層存在であって3人以外にも同じ課の人間はいっぱいいる。
さらに重要登場人物で、ハチマキの妻になるタナベがマンガ版では第2巻から登場するが、アニメ版では物語の最初から登場する。別作品として見た方がいいかもしれない。
マンガ版の方がシンプルに堅固にできていて、ボクはマンガ版の方が好きだ。
どちらにも共通する骨格は,登場人物の生い立ちと地球への熱い感情だ。
とくに日本人ハチマキ、星野八郎太の出身家庭は詳しく描かれる。家にいるのは母とハチマキの13才の弟・九太郎だけだ。九太郎は自作ロケットの打ち上げに熱中している。
そして家にいない父・星野五郎も重要な役回りをする変人だ。
物語は、最初からの「デブリ掃除船」と、宇宙開発に反対する「宇宙防衛戦線」、そして木星探査船、の3つをメインに展開する。
主役級だけではなく、ハシヤクまで一人ひとりの人間が輝いているのも面白い。たとえば木星探査の冷静無比の責任者ロックスミス。「異星人レティクル星人の地球探査員」を自称する「男爵」。木星探査船の老人船長などなど。
マンガ版のストーリーの転換点をなす重要なエピソード。宇宙防衛戦線のハキムを撃とうとするハチマキ。それを止めようとするタナベ。
ひまと機会があったらマンガ版とアニメ版を両方見てほしい。
著者が宮沢賢治が好きらしいのも共感できいる。
12才の月面人(ルナリアン)少女ノノと夜の月面での会話。
「いいでしょ、私の海」
「広い海だな。しかし」(PHASE2)
もう一つ地球上で、若きユーリとネイティブアメリカン自治区の老人との対話
「お若い方、あなたが今いるここがご存じですかな?」
「え?…(一部省略)…地球?」
「ここも宇宙だよ」(PHASE4)
宇宙防衛戦線とゴミ屋たちとの対話、宇宙パイロットたちと木星との対話は機会があれば紹介したい。