新・本と映像の森 293 鈴木敏夫『風に吹かれてⅠ』中公文庫、2019年
聞き手/渋谷陽一、鈴木敏夫:『風に吹かれてⅠ スタジオジプリへの道』中央公論新社、2019年3月25日、253ページ、定価本体640円
日本を代表するアニメーションスタジオ・ジプリのプロデユーサー鈴木敏夫さんは「どうして鈴木敏夫になったか」を解明するインタビューなんだけど、無類におもしろい。
つまり「どうやって鈴木敏夫さん・宮崎駿さん・高畑勲さんは出会い、どうやって鈴木敏夫さん・宮崎駿さん・高畑勲さんになったか」という話なんだと思います。
個人それぜれ単体では、たぶん意味をなさない。
本来、鈴木敏夫さんは雑誌編集者だった。徳間書店の『アサヒ芸能』記者から同じ会社の創刊する新雑誌『アニメージュ』の編集長に1978年5月に引っ張られたのが運のつき。
そこで鈴木敏夫さんは、アニメ作品「太陽の王子ホルスの大冒険」に出会い、その実作者高畑勲さんと宮崎駿さんに電話インタビューするのが最初です。それもすごくおかしいのだけど、3人のそれぞれが何か感じたってことでしょうか。
以下、すべておもしろい。
「トトロ」を20分長くするので主人公が1人からサツキとメイの2人になったとか。
「ポニョ」の前に「いやいやえん」があったとか。
「借りぐらしのアリエッテイ」の監督に米林宏昌さん(麻呂)がなったいきさつ。
映像の「やわらかさ」(p177)やコンピューター問題も実作者(ボク)としてはおもしろい。CGとお地蔵さんの話も。
それから次世代のジプリのこと。ボクだって考えてますよ。次世代のことは。それを言うのはきつういから鈴木敏夫さんは明言してません。続けるとも、閉じるとも。まあ、そういうことかなあ。