新・本と映像の森 294 福井晴敏『亡国のイージス (上・下)』講談社文庫、2002年
552+564ページ、定価本体695円×2、原作1999年講談社。
裏表紙では「長編海洋冒険小説」と書いてあるけどボクはSF小説の傑作と思う。
なぜならシチュエーションが沖縄米軍基地で開発された≪GUSOU≫という核兵器級の爆発兵器の争奪戦をめぐるドラマだからだ。沖縄「辺野古ディストラクション」とよばれる大爆発事故が起きる。
そして主人公は≪GUSOU≫であり、≪GUSOU≫の終わりとともに物語も終わる。
小説の主な舞台は海上自衛隊のイージス型に改装された護衛艦「いそかぜ」。
≪GUSOU≫を奪った反乱した北朝鮮特殊部隊長ヨンファ。
いそかぜの艦長宮津とクルー。
そして如月(きさらぎ)行。もちろんボクは祖父を殺した父を殺害した行、絵の才能を持つ行の熱い味方です。
艦上の3者と日本政府の4者の動きが、いそかぜと日本の未を決定する。
興味があるのはいそかぜのクルーたち。よく描けていると思う。
とくに、千石恒史先任伍長、42才。
自衛隊員に比べて北朝鮮ゲリラたちは描きこまれていず単純すぎる。
いそかぜは反乱をおこし、東京湾に侵入する。行き詰まる対峙が始まる。
自衛官のディテールはよく書かれていて、軍事オタクも一定満足できると思う。とくに護衛艦の主である古参「先任」集団とキャリア幹部の差がよくわかる。
映画は見ていません。小説だけを読んでたほうがいいかなという気がします。