雨宮智彦古代史メモリー 44 20200622 本と映像の森 39 カン吉云さん著『倭の正体』三五館、2010年 20100517
「2010年05月17日 05時03分30秒 | 本と映像の森
本と映像の森 39 カン吉云さん著『倭の正体』三五館、2010年3月8日初版~3月25日3刷、222ページ、定価1500円+
すみません。「カン」の漢字が見つかりません。
著者のカンさんは、韓国人の言語学者です。
古代史に出てくる「倭」とは何か、その正体を追った推理研究です。
カンさんは「倭」=日本列島の「日本」という常識を疑い、研究していった結果、日本列島の近畿天皇家(カンさんの言う「大和倭」)が3世紀あるいは4世紀から朝鮮半島に軍を派遣していたという定式を破棄して、古代朝鮮の史書や古代日本の史書に現出する「倭」は、南朝鮮の「加羅」や「百済」などを本拠地にしていた勢力であり、加羅や百済の衰退や滅亡にともなって、日本列島へ移住・亡命した人たちであると推定しています。
いちばんおもしろいのは、欽明・継体・舒明・皇極・幸徳・天智・天武天皇と後に『日本書紀』で命名された人たちは、どこの誰なのか、という謎解きでしょう。
つまり、彼らは、朝鮮系の王族たちであったという解明です。
この謎解きが正解なのか、誤解なのか、みなさん自身で判断してください。
万世一系の、歴史学右翼のみなさんにはショッキングな、とんでもない結論で、「トンデモ本」ということになるでしょうが、ぼくはその正邪を検討すべきまじめな本だと思います。
細かい判断はまだできませんが、百済・加羅などの「南朝鮮」から日本列島への移住の動きという流れは正視すべき流れだと思います。
当時は、中国や朝鮮が日本列島にとっては、模範・モデルなのでした。
いよの時代から、近畿天皇家が派遣軍を朝鮮に送って支配して、鉄や先進物を日本列島に持ってきた、というような妄想は、そろそろ成り立たなくなってきていると考えます。
ただし「ドラヴィダ語」うんぬんの部分については「まじめ」なものかどうかという判断を保留しておきます。
なにしろ「ドラヴィダ語」うんぬんは、あの大野晋さんが関係しているのかどうなのか。
大野晋さんの日本語とドラヴィダ語の関連説については、安本美典さんの批判が正しいと思いますので、参照してください。」