東京地方は17日の日曜日に風速毎秒7メートルの南からの強風が吹き荒れました。今にも雨粒が落ちてきそうな空模様で湿度は70%に達していました。玉川上水緑道の木々の葉はあおられて裏返しになって白く、そのざわめき音が鳴り止みません。足元には小枝が散乱し、強風に驚いた橙色の口ばしのムクドリのつがいが地表まで舞い降りてきたりしていました。
この日は渋谷で第12回渋谷・鹿児島おはら祭が開かれました。午後から道玄坂通りと文化村通りの交通を規制しておよそ50の踊りの団体(連)がパレードします。私の同窓生の参加もあり、昨年初めてこの祭を見学しました。今はアメリカに住む孫を抱きかかえながら強烈な日射しの中での見学でした。鹿児島のおはら祭が渋谷で、阿波踊りが高円寺で催されるなど各地方の祭が再度東京で開催されるという現象が見られます。
心残りでしたが、渋谷の祭り見学を今回は見送り強風の中を中央図書館へと向かいました。「翁童論」という本をさがすのが目的でした。3年前に亡くなった歌人の山中智恵子が紹介していた本です。パソコンで検索すると地下の書架にありました。著者は国学院大学教授の鎌田東二で88年に新曜社というところから出ています。500頁以上もある分厚い本で、最初のページに 「かつて人は、老いの中に若あるいは童に通じる命の循環を見た。だが今日、多くの人は、老いの中に若さの消滅あるいは衰弱をしか見ない」 とあります。
新着本コーナーの側を通りかかった時に目に飛び込んできた輝く本がありました。「羽化堂から」 がそこにあったのです。昨春に亡くなった歌人の前登志夫のエッセー集です。NHK出版からこの4月20日に出ていました。NHK歌壇やNHK短歌に5年間にわたり掲載したものを再編成し、編んだものです。あとがきに 「おのれを限りなくむなしうして、こころとかたちのすべてをおおらかな世界の基層ゆだねるという伸びやかさと自在さ」 と歌弟子の一人が書いています。「翁童論」 よりもこの本に出会えたことでこの日しばらくわくわくしていました。