東京は雪の日が少ない。ある雪の日をきっかけに近くの緑道がでこぼこ道になってしまった。これほどまでにでこぼこになるのはこれまであまり経験したことがない。ぬかるんだ土が大ぜいの通行人の靴に付着してあちこちに運ばれたせいだろう。乾いた路面は洗濯板の形状だから足首に負担がかかり歩行もままならず、自転車はガタガタと振動しつつ蛇行する。先日の夕暮れ時に買い物キャリーバッグを引いていた老婆が立ち往生し、それを見かねた女子中学生数人が手助けするという一幕もあった。
玉川上水オープンギャラリーが開設されて3年が経ち今年で4年目を迎える。3年目には充実したパンフレットが発行された。そのパンフには365日の一日一日の「さんぽ暦」が掲載された。たとえば昨年の雨水のパンフレットを見ると、2月20日サンシュユの花、21日ホトケノザの花、22日カンスゲの花穂、23日ヒメオドリコソウの花、24日モズのカップルといった具合だ。いわば発行者の鈴木さんの長年の記録の集大成である。この3年目は私は観察会にほとんど参加したので、なんだか一つの課程を修了した気分になっている。
昨年の暮れに鈴木さんが体調を崩されたことがあった。3年目のパンフのうちその間の大雪、冬至、小寒の3つの節気が未発行になっている。残念だが修了証書はお預けということらしい。なにごとにおいてもマンネリズムを打破することは大変なことだ。今回の雨水の節気で鈴木さんが発行したのは「観察の手引き・玉川上水の野鳥」という初心者に向けたパンフだった。どうやら今年度は景観、野鳥、野草、樹木、昆虫のテーマごとのパンフになるようだ。留鳥10種類を識別できるようになろうと、シジュウカラ、コゲラ、キジバト、メジロ、ヒヨドリ、ムクドリ、エナガ、ヤマガラ、カワラヒワ、カワセミが取り上げられていた。私の場合、そのすべてについて識別可能だったのでひとまず安心した。
雨水の観察会はおだやかな陽射しに恵まれた。今年は寒さのせいで梅の開花も二週間ほど遅れているという。下流に向かって往復2時間余りの散策になった。こちら方向の緑道は通行量が少ないせいかそれほどひどい道路状態ではない。それにしてもこの時期の緑道は葉をすっかり落とした木立が続いて殺風景だ。しかしこの見通しの良さが小鳥の観察に適しているのだ。この日はシジュウカラ、キジバト、メジロ、エナガに出会う。思いがけなく水辺で日向ぼっこをするゴイサギにも出会った。カワセミの白い糞の痕跡もあちこちに見られる。静止しているカワセミをいつか見たいと思っている。(写真は日展会場にて)