花粉が舞い、大陸からは黄砂が飛来して息苦しく感じられるのがいつもの春である。それだけでなく今年は砂ぼこりに見舞われる風の強い日が多くなった。私の花粉症は一向に治まる気配がない。しかし福島原発事故による高い放射線量の地域のことを思えば春のほこりっぽさを愚痴るのも気がひける。ところでメルトダウンの福島第一原発で停電が発生し29時間も冷却設備が停まるという事故が発生した。調べてみると仮設の配電盤にネズミが入り込みショート(短絡)したのが原因とわかった。大津波もネズミ一匹も想定外のことのようである。
庭に一本あるツゲの木が枯れ始めた。それらのことに詳しい人に聞くと土壌か虫が原因だろうという見立てである。苦土(マグネシュウム)石灰(カルシュウム)と化学肥料とスプレー式の殺虫剤を用意した。しかし虫が取りついたような気配はない。殺虫剤の散布は後回しだ。まず根元を掘り起こして苦土石灰と肥料をほどこすことにした。掘り起こしたついでに根切りを思い立った。枝切りハサミを土の中に突っ込んで根を切断することにした。しばらく作業をしているとかすかな衝撃があり、その瞬間に胸騒ぎを覚えた。そこに埋設されていた車庫の門扉に通じる電源コードを切断したのである。根切りなどという余計なことをしなければよかったという後悔をしばらくこの身で引き受けた。
その日の夜に一部の部屋で照明が点かない。切断の瞬間に漏電ブレーカーが作動していたのだった。翌日になって門扉のメーカーに電話したりしたが結局は近くの電気屋さんにお願いするしかないことが判明した。電源コードはビニール管に保護されて埋められている。切断された箇所を径の一回り大きいビニール管で接続して補修が終了した。全て掘り起こしてやり直しかと想像したが、切断箇所近くの一部の掘り起こしですんだ。嬉しくなって経費はどうぞ多めに請求してくださいというと、それでは五千円という申し出があった。
列島では例年よりかなり早く桜が咲きはじめた。畑の春菊と小松菜も桜の開花に合わせるようにめざましく伸び始めている。庭先の風景が急激に変化したと感じた。とくに小松菜の葉はすでに野菜とは呼べないほどに肥大化している。それと同時に小松菜の「菜の花」が咲き始めて芳香を放っている。菜の花とはアブラナの花のことだが、小松菜はアブラナの変種だからこれも菜の花と呼ばせてもらおう。これからは葉でなくて花をお浸しにしていただくことになる。菜の花の傍らで黄色のスイセンが咲いている。畑の思いがけない場所に紫色した小さなスミレが三株も咲いているのを見つけた。