玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*作家・目取真俊

2018年02月08日 | 捨て猫の独り言

 名護の市長選の結果に衝撃を受けて、その夜は寝付けない。翌朝ブログ「チョイさんの沖縄日記」を開いた。沖縄タイムスの安部記者が書いたコラムが取り上げられていた。目取真(めどるま)俊さんが詩人石原吉郎のエッセー「ペシミストの勇気について」に触発されたという言葉「嘆かず依存せず黙々と」が紹介されていた。

 目取真とは琉球の地名や苗字だ。目取真さんが、辺野古の海でカヌー隊の一人として連日抗議活動に取り組んでいること、そして芥川賞作家であることを、うかつにも初めて知った。1960年沖縄生まれ、本名島袋正、17997年「水滴」が芥川賞、2000年「魂込め(まぶいぐみ)」で川端康成文学賞を受賞している。

 市長選の翌日、上記2冊を借りてきてそれらの短編を一気に読んだ。「水滴は」男の冬瓜ほどに腫れあがった右足から滴る水を、沖縄戦で戦死したはずの兵士たちが夜毎に飲みに来ては壁の中に消えてゆく物語だ。映画化もされたという「風音」は風葬場にある特攻隊兵士の頭蓋骨の二つの眼窩から吹き込む風が、こめかみの穴から抜ける風の音だ。

 「魂込め」は沖縄戦の最中に海亀の卵をとろうとして銃撃で死んだ母親の子が人事不省に陥る物語。会話は沖縄語で表現されている。市長選の悔しい結果が出た日に、この読書にいくらか慰められた。目取真さんのブログ「海鳴りの島から」を知り、さっそくお気に入りに入れた。4日のブログには「逆境の中でこそ真価が問われる。敗因を真摯に反省し、現場での戦いを強めましょう」とあった。

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