入場無料の「日展の日」は9日の金曜日だった。雨の日だったが、囲碁会を休んで、六本木の新国立美術館(新美)に出かけた。16ページの「日展ニュース」に新美についての記事があった。東京都美術館が日展など全国規模の公募展に使われているため、都の美術館は都民に優先的に使わせて欲しいという陳情が寄せられたことなどから新美の建設構想が出た。
新美が建っている土地は、江戸時代には伊予宇和島藩伊達家の上屋敷、明治に旧陸軍第一師団歩兵第三連隊の駐屯地、昭和37年からは東京大学の生産技術研究所用地、平成13年に同研究所が駒場に移転、新美が開館して今年で11年目になる。建物は黒川紀章の設計で、展示室は合わせて12区画ありそれらを自在に組み合わせて海外からの特別展や大規模公募展に対応することができる。
かなりの数の作品だからじっくり見て回るということにはならない。どの作家も飽くことなく同じテーマを追求し続けている。日本画の吉岡珠恵の「梅雨入り」は頭上から見たビニール傘の中の子供という構図だ。洋画で伊藤寿雄の昨年の「母の像」には括弧付きで百歳とあった。今年はどうか、これはまるでドキュメンタリードラマだ。島根県の高校教諭の春日裕次が描く青年のモデルは同僚教諭だという。
知人の紹介で会ったことのある鹿児島県姶良市在住の塩屋信敏は「南風(霧島の見える岡)」で、霧島連峰を背にした若き女性を描いた。「ヨロン島の菊お婆」は埼玉県で美術教師だった山田郁子(1941年生まれ)が描いた。今年も「桜島」を出品したのは竹留一夫で、鹿児島の出身で東村山市在住という。子供たちにも楽しめる彫刻の「帰ろうよ!」は、鹿児島県いちき串木野市在住で若手の丸田多賀美の作品だ。