どこからか金木犀の甘い香りが漂ってきて、吹き渡る風が心地よい。柿の木がさかんに葉を落とし始めるころに、曼殊沙華がいつもと同じ、突然姿をみせて驚かせてくれる。彼岸花は庭の茂みの中であちこちにゲリラ的に現れて片寄せ合って咲いている。
柿の木は葉を落とし始める前に、心配するほど未熟な実を落とし続けていた。その葉は春の新芽のころの萌黄色の柔らかい葉と異なり、分厚く固く大きな葉となって落ちる。半分は通路側に落ちるので、それを拾い集めるのがこの頃の日課の一つだ。
それほど広くもない庭の芝生がのび放題にのびて手を焼く。以前は電動式のバリカンで刈っていた。配線を切断したり、はずれ落ちた刃をもとに戻すのに手間取ったり悪戦苦闘した。それで今は刃こぼれ覚悟で小ぶりの剪定ばさみで人の力のみで芝を刈る。
家人は重たげに繁った松の葉をむしり始めた。新芽の切り取りは今年初めてやってみたが、葉のむしりはまだやったことがない。来年あたりむしりに挑戦してみよう。なるほど身軽になった松の木は枝ぶりもあらわに美しくなった。毎年芝も松も散髪が必要なのだ。