『「文は人なり」とよく言うが、それは単に人格が文章に現れるということではない。それは、文章にした時、いかに、人間の真実が失われるか、さらには、言葉のみならず、時々刻々の人間のあり方がいかに真実を裏切ることが多いか、そのことに対する痛切な嘆きなのである。』良寛入門という本の中に書かれていた言葉の一節から。
書くことも話すことも真剣に考えれば考えるほど書くこと、話すことから遠くなってしまう。でも、生きている以上、人と人とのコミュニケーションをとる手段として話すことも書くことも必要なものでもある。あまりにも話すこと、書くことに慣れすぎて真剣に考えることもなかったが、言葉が軽く飛び交うこの社会をあらためて見ることも大切かも。
一方、言葉や文章から生きる勇気や希望を見出したり、感動で涙することも事実である。上の表現には反しているようにも思うが、私にとって忘れられない本の文章がある。
30年ほど前になるだろうか、たまたま買って読んだ「美術の心をたずねて」という本だった。著者は箕田 源二郎という人で、中学生向けということもあったのだろうが、この本を読んでいて、本当に心が不思議と温かく感じた。
これまでもいろいろの本を読んできたが、優しく語りかけるような、こんな文に接し驚き、感動した。今でも印象深く残っている。
箕田 源二郎さんは画家として活躍されていたということだが、私はこの本から、この方の存在を知った。