ともに半白髪の夫婦が扉の閉まる寸前に乗り込んできた。
旦那は少し早く、奥様はぎりぎりだった。
「戸を押さえておいてって言ったのに」と奥様は文句を言っている。
旦那は知らん顔、奥様はもう一度、「言ったのに」
「車掌に手を上げて合図しておいたから」と旦那。
奥様は気に入らぬげ。
エレベーターなら扉を押さえておけば閉まらずに乗り込めるが、いまの電車はそうはいかないだろう。
六十何年か前には扉を押さえられたまま電車が走っていたときもあったけれど。
何でも押さえ込めば言うことをきくと思っていらっしゃる奥様相手に、もうしばらく我慢が続くのかと、気の毒に思った。
だが、三つ目の駅で二人ともシャラッとした顔で降りていく。
心配ご無用だった。
旦那は少し早く、奥様はぎりぎりだった。
「戸を押さえておいてって言ったのに」と奥様は文句を言っている。
旦那は知らん顔、奥様はもう一度、「言ったのに」
「車掌に手を上げて合図しておいたから」と旦那。
奥様は気に入らぬげ。
エレベーターなら扉を押さえておけば閉まらずに乗り込めるが、いまの電車はそうはいかないだろう。
六十何年か前には扉を押さえられたまま電車が走っていたときもあったけれど。
何でも押さえ込めば言うことをきくと思っていらっしゃる奥様相手に、もうしばらく我慢が続くのかと、気の毒に思った。
だが、三つ目の駅で二人ともシャラッとした顔で降りていく。
心配ご無用だった。