肺炎にかかっている人に「これより重くなると命が危ないですよ」と言うか「なんでもありません、あまり激しい運動をせずに静かにしていらっしゃい、元気がいちばんですよ」と言うか、どちらが患者のためによいでしょうか。
前のことばにうそはありません。
後のことばはのっけからうそです。
うそが人の命を救う場合もあります。
一人の命だけでなく、国の命を救う場合もあるでしょう。
たった二文字の"うそ"にも、自分の立場を守るだけのうそがあります。
なかには国を売り渡すようなうそもあります。
政治をつかさどる人の虚言率は、数値にしてみても、適性の判定材料にはなりません。
平気でうそをつくのは悪い人で、真っ正直は良い人とも言い切れません。
うっかりうそと知らずに、国の代表のような顔をして謝罪のことばを述べてしまって、それが何十年ものあいだ国の重荷になることもあります。
後でうそと知らされても、真っ正直な人はおおむね意固地ですから、謝ったのが間違いだったとは一生言いません。
その人の望みは、「正直一途のりっぱなかただった」という弔辞がほしいというだけのことかもしれません。