人類の成長に下手を打ってしまった最悪手は、カネという架空の価値を信仰の対象にしてしまったことです。
信仰はいったん頭にしみつくと、洗い流すことはむずかしくなります。
カネを稼ぐにいちばんの方法は何かを売ることです。
人の命を奪う道具や、薬剤などには法外な値がつきます。
モノにはそれを作ったり加工したりという手間がかかります。
芸を売るにしても、高く売るには大変な稽古が必要です。
ところが、ほとんど手間なしで高く売れるものがあります。
それは、元手のかからない"うそ"です。
マーケットを広げ、たくさんの"うそ"を売るには、マス・メディアに乗せると効率がよくなります。
マス・メディアに乗せるには、費用がかかりますが、その費用は"うそ"を売る人の負担にならない、うまい仕組みになっています。
TV放送に乗せると、はじめは"うそ"だろうと思われても、何度も繰り返すうちに、無判定で認められるようになります。
世の中全体が浮足立つ国会議員選挙のときなどには、"うそ"がよく売れます。
公示前に名前の旗を立て、"うそ"の売れそうな町を選んで、その町に住んでいる人の喜びそうな"うそ"話を、上手に包装して売り歩く人もいます。
街角に立ったり走り回ったりしている"うそ"の売人には、だいじな票を吸い取られないよう、注意を怠ってはなりません。