人心を惑わさない、もめごとを避ける、波風を立てさせない、静かに、穏やかに、騒ぎ立てない、安穏平和がいちばんという暮らし方は、多くの人が望むところです。
それを理由に借りて、だいじなことでも言いにくいから知らせずにおく、そのうちに知られては困ることになっていく、それが時を経れば手がつけられなくなる、世紀をまたいでも解決できない、次の世紀末にようやく人々はあきらめ、苦い思い出だけが残る、これが安穏平和なのでしょうか。
水面下という言葉がよく使われます。
誰にも経過がわかるようでは交渉ごとがうまくいかないので、話をうまくまとめておいて、結果がはっきりしたときに皆に知らせるための方法をひと言で、多かれ少なかれ事情を知った人が得意げに話す場合の用語です。
これは、こっそりやっていて情報は隠蔽されているという状態の言い換えに過ぎないのですが、隠蔽では聞こえが悪く、水面下と言っておけば、失敗しても責任を追及されないという利点もあって使われるのでしょう。
ともあれ、隠蔽が習性になりさらに症状のようになれば、安穏平和とはほど遠いことになるのは間違いないでしょう。