南無煩悩大菩薩

今日是好日也

愛が見えてくる。

2017-10-27 | 古今北東西南の切抜
(gif/source)

もんどりうった私は大量の血が流れ出していることに気付いた。

「あー、いかないでくれ。ごめんよ。本当に悪い事をした」私は、私の体の一部として体の中を流れる、生命を持つ独立した驚異とでもいうべき血液細胞に、つまり、白血球や血小板に向かって声をかけていたのだ。私のばかげた不注意から、浜辺にうちあげられた魚のように、熱い歩道の上で死んでいくものたちに。祈りとさえいえる深くはげしい悔悟の念が、大きな波となって私の心に押し寄せ、宇宙的スケールの愛が駆け巡り、この体験を、いくつかの太陽系を失った銀河の嘆きと同じくらい広大な破局として心に刻み込んだ。

私は何百万というちっぽけな生命からできている。私という巨大な存在が傷ついたとき、自らは知るべくもないのだが、私を構成している愛に満ちた細胞たちは、身を挺して傷をおおい、修復しようと大急ぎでかけつけるのだ。私は彼らにとっての銀河であり、彼らの森羅万象なのだ。私は初めて彼らへの愛を意識した。その時私は、自分の住む宇宙の中で、大宇宙における超新星の爆発にともなうのと同じぐらいの大量の死をもたらしたと考えた。

傷も癒え、私は事故のあった場所を訪れた。歩道にはかすかな血痕が残っていた。彼ら小さな存在たちは逝ってしまった。完全に破壊されて。それなのに、彼らが支えていた存在はいまだに生き残っている。

-切抜抜粋/Loren Eiseley 「THE STAR THROWER」より-

「太陽を、そして他の星々をも動かす愛」とダンテは言った。

パスカルはこう言った、「汝、我を見いださない限りは、我を探し求めもすまい」

これらの言葉に「なぜ、こんなに気持ちが動くのか」と驚き、そこで、なにかに支えられたい自分の弱さと、弱い自分を支えてくれている様々な存在に気が付いた。「自我」というまぶしい光、目くらましを消すと、ありとあらゆる周りの存在が自分を支えてくれていたということが見えてくる。
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