南無煩悩大菩薩

今日是好日也

strange attractour

2018-10-01 | 古今北東西南の切抜
(gif/original unknown)

クレイグ・レイノルズは、鳥や魚、ミツバチなどが群れをつくる時のパターンに、気象と類似した点があることに気付いていた。

窓に一羽の鳥が飛びこんでくることはあっても、鳥の群れが飛び込んでくることはまずありえない。

鳥や魚、ミツバチの群れは、個体のときより最大50倍も環境の変化に敏感だ。つまり、単独でいるより、群れと集団を形成した方が、天敵や窓などの刺激に容易に反応できるということだ。

群れをこのように過敏にしているのは何だろう?レイノルズは興味を持ち、これは「部分」だけを見ていては説明できないという結論に達した。

個体の鳥をヒーロー的リーダーとみなすと説明がつかなくなる。

そこでレイノルズは鳥の群れを環境の刺激や変化に敏感にさせている相互作用のパターンに着目し、群れの行動をシュミレーションすることにした。(コンピュータでつくったバーチャルな鳥を使って実験した)。そして試行錯誤の結果、ついに相互作用の三つの単純なルールを導き出した。(四つ以上のルールを適用するとその敏感度が低下することも突きとめた。最小限かつ決定的なルールがあるらしく、それを超えると敏感さが妨げられる。)ストレンジ・アトラクタは、複雑系の特徴とされることが多いが、それ自体が複雑である必要はないのだ。次のとおり、びっくりするほど単純だ。

①ほかの鳥や物体(例えば、窓)との最小距離を保つ。
②近くの鳥と同じ速度を保つ(周囲の速度を三次元で計測)。
③群れの中心方向に進む。

三つのルールは常に働いていなければならない。たとえば、第三のルールだけが働いた場合、惨憺たる結果になることは確実だ。三つの全てが機能して、レイノルズがつくったバーチャルな鳥たちは、実際に空を飛ぶムクドリの群れさながらの、流れるような動きをする。
これは人間の集団でも実験できる。広い部屋の中で、一人ひとりが次の三つのことをするように指示するのだ。

①「目印」となる人を二人決め、これから数分間この二人から目を離さないようにする。
②空間内を誰にもぶつからないように動き回る。
③目印の二人からなるべく等距離を保つようにする。

全員がそうしているとき、だれかがバルコニーのような高いところから観察すると、本人たちは気付かないが、鳥の群れを彷彿とさせるパターンが見えるだろう。さらに、誰か二人を選んで、こっそりこう指示する。「目印の人から等距離を保ちながら、少しずつドアに向かって、ドアから出て行ってください」。一分もしないうちに、集団全員が部屋からぞろぞろ出ていくだろう。これは単純なルールがパターンを動かすことを劇的に示す実例だ。

つまり、複雑系を形づくっているストレンジ・アトラクタは、あとから見れば非常に簡単なルールによって規定されているかもしれないのだ。

-切抜/GETTING TO MAYBE 「誰が世界を変えるのか」より

コメント (2)
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