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「・・男から言い出しまして話のつかぬ事も芸者から話しますとすぐ承諾を得るようなこともあるのは、まったく嘘のような事実であります。
つまりおのずから調和的勢力を持っておりますから、話も自然面白く結び付けられます。これは極めて真面目な間柄でもそうですし、一つの仕事を仕組もうとする人の策略(ポリシー)において、そういうことがしばしば繰り返されるのは先刻ご承知の成り行きでしょう。
一口に芸者のために男が堕落するとよくいいますけれども、芸者のために堕落するような人間は、芸者がなくてもとどのつまりは堕落するので、あるいはそれ以上の毒を流し罪を造るかもしれません。現代の紳士、淑女の人々に、芸者のこうげきを立派にできる資格のある人が、いくたりあるでしょうか、これが問題です」。
ー石井美代「芸者と待合」より
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