バネの風

千葉県野田市の「学習教室BANETバネ」の授業内容や、川上犬、ギャラリー輝の事、おもしろい日常を綴ります。

芸術は調和

2012-09-12 07:23:58 | 
 小学6年生達.修学旅行シーズンでポツポツと欠席が見られる。関東地方の小学生の修学旅行先は,日光。そう言えば先ほど日光に行った際、柴又のトラヤ風の店が,黄色い帽子で埋まっていたのを見た。
 まだ残暑厳しきおりなのに,日光は観光客で賑わっていた。しかし我々の今回の日光行きの目的は観光でも東照宮参拝でもなく、小杉放庵美術館で「中村直人(なかむら なおんど)展」を見ること。
 団体客や外国人がひしめくメインストリートを抜けたところに、目指す美術館があった。
 父の伯父にあたる直人さんは洋画家として知られているが,最初は彫刻家を目指していた。その彫刻時代の作品を中心に集めた展覧会だった。日本全国に散らばる、また個人所有の物も集めたとのことで、初めて見る作品が多数あった。
 入口の1室は小杉放庵の作品。その先2室目から直人さんの彫刻が並ぶ。生きているかのような立像。生活する人間像。ダイナミックさに圧倒されるというよりも、意外にも、作品はコンパクトにまとめられているなという印象をもった。デフォルメで奇をてらう作品はない。しかし1室見終える頃にわかったことがあった。
 生活者であることを思わせる立像。木々や空を感じさせる鳥。こういった被写体の心とその背景、そこに作者の心を含め,これらのバランスを保ち表現することこそが芸術の極意であり、それができるのが芸術家なのだと。見るものの心をざわつかせる事なく,腑に落ちるものにしてくれる。こうやって直人ワールドに引き込まれた頃、気づくと館内は込み合ってきた。直人ファンなのか、作品批評しながら熱心に見ている人がいた。
 直人さんの彫刻作品は子どもの頃うちにあった。床の間に置かれていたので,毎日見ることはなく目にしていた。このバランスはいつも目にしていたことになる。だからなのか、バランスよい作品というのはあまりにも当たり前なものになっていた。むしろ物足りなさを感じていたかもしれない。
 自分で絵を描く様になって,バランスがとれてちんまりまとまりそうになるのがいやで、故意に壊す。すると全体の調和が崩れるので,直す。そして壊す。そんなことを繰り返し,最終的には仕方なく落ち着きまとまった作品になる。それに対し、「よくまとまっている」と評されるが、このおとなしさが厭だった。しかし今わかったのは「まとまる」ことの大切さ。作品は見る人の心との調和も大切であり、そう言う意味で全てのバランスを保つことのできる作品は優れているものである、ということ。子どもの頃に目にしていたあの像が浮かんだ。
 美術館を出たその足で,日光彫り体験館にむかった。我々一行は直人さんを気取って作品を作ることになった。係の人が彫り方説明してくれているのに,皆もうすっかり芸術家気取りで自分の図案づくりに没頭。購入した板に鉛筆で線を入れ彫っていく。ただそれだけのこと。しかしこれが難しい。まず道具の使い方。力の入れ具合や角度で線の勢いが変わる。彫った線のやり直しがきかない。彫り過ぎたり,太すぎたり。細すぎた線をなぞり,迷い線になってしまったり。何より、何となく変。要するにバランスが悪い。うまいものを作ろうと思うプチ芸術家達は,皆気をてらおうとしていた感あり。せっかくバランスの大切さを実感したところなのに。



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