2年生の作文授業で、感想文を書くことにしました。
テーマは「自然と動物と人間」です。
「河童のクウと夏休み」を学生たちに見せてあげたいばかりの
苦肉の策でした。
中国の若者はアニメ好きが多いと言っても、
萌えだのツインテールだの、
ストーリー重視から離れつつあるのが寂しい今日この頃、
また一方、「アニメなんか子どもの見るモノ」と
頑固な婆さんみたいな女子学生たちも結構いて、
彼女たちは韓国ドラマをよく見ています。
そのような傾向が顕著である2年生クラスでは、
もちろん「河童のクウ」を見たことがある学生は皆無でした。
て言うか、「犬夜叉」見た人もたったの2人しかいないという…。
「NARUTO」も見ていないという……。
2週間かけて観ましたが、かなり入れ込んで見ている感じでした。
クウが康一一家と仲良くなっていく過程は、随所に笑いがあり、
このアニメを作った原恵一監督ってどんだけ天才かと思います。
でも、後半、いよいよテーマの真髄にかかわる場面では、
表情が読み取れませんでした。
感想文が仕上がって来るのを待ちたいと思います。
で、感想文の参考に私の宝物箱から、
江財大の学生たちの作文を探しだし、
クウのことを書いていた2作文を参考資料として、分析しました。
3年前の奉延玲さんの作文を久しぶりに読んで、
奉さんが、私の何気ないお喋りにもきちんと耳を傾け、
記憶し、整理箱に保存する理知的な子だったことを懐かしく思い出しました。
彼女は今、広州市で働き、
同級生だった潘梅萍さんと一緒にマラソンをやったりしているそうです。
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「人も自然と仲良く暮らそう 」―河童のクウからもらった感動と課題―
奉延玲
南昌も、ようやく春めいてきた。万物が蘇り、風がすがすがしく吹いている。しかし、今朝、私は寮から教室に行く途中で嫌なことを見てしまった。寮の管理人さんの子どもが寮の下の庭で、バドミントンのラケットを振り回し、小鳥を追いかけていたのだ。かわいそうな小鳥はチョンチョン跳び回り、最後はどこかに飛んでいった。(子どものやることだ)とも思ったが、隣で笑っている管理人さんを見て、何だか悲しく感じた。
去年の冬、日本人の先生に紹介してもらった「河童のクウと夏休み」という日本のアニメを何度も見た。アニメからは河童のクウと康一君一家の愛が滲み出て、寒い寮の部屋を暖めてくれた。
しかし、その深い愛情に感動しつつも、「人間と動物はどのように共存すればいいか、人間中心の社会で動物はどうしたら幸せになれるのか」という、アニメから提起された問題が頭から離れなくなった。
江戸時代に生まれた河童のクウは、お父さんや他の仲間と一緒に竜神沼で暮らしていた。しかし、貪欲な侍が竜神沼を埋め立てて田圃にする計画を立てた。クウのお父さんは自分たち河童の住むところを守るために、侍に乞い願ったが、侍が「下等動物」の陳情など聞くものか。怒った侍は刀でクウのお父さんを切り殺した。
これがアニメの冒頭シーンである。お父さんの死骸を抱くクウの泣き声を聞き、「怒りたいのは河童のほうだ!」と私はクウの代わりに叫びたかった。河童は生息地を奪われ、さらに肉親を殺されたんだ。これは私たち人間の勝手な犯罪でなくてなんだろう。
アニメでは、現代社会にやって来たクウの生活も描かれた。地震で地下に百年以上も埋められたクウは、小学生の康一君に助けられ、康一の家で楽しく暮らしていた。
しかし、クウの存在が世間に知られると、マスコミはクウの特ダネニュースのために、住民は無責任な好奇心のために、康一たちの家をとり囲み、大騒ぎになった。康一家族を含め、人間はクウの気持ちが分かっていなかった。クウを始終思っているのは、康一の飼い犬「おっさん」だけだ。クウは結局、現代でもまた被害者になった。人間の私は恥ずかしくて、苦しかった。
そんなとき私は、ふと、先生から聞いた北海道の熊のことを思い出した。中国では、熊は国家の重要保護動物である。それなのに、高収益を求めて、不法に熊の肝や掌を取る人が増え続けている。ところが、日本の北海道知床では、熊が人間と共存しているそうだ。時折、熊は人間の村に降りて来ることがある。村民は遠くに熊の姿を見たら、「チリン、チリン」と鈴を鳴らして、「ここに人間がいるぞ。近寄るな」と知らせる。できるだけ、お互いの生活圏に入らない。それを聞いて、面積996万平方メートルの中国に、なぜこのような、動物と人間が仲良く暮らせる所がないのかと、情けなかった。
アニメの最後に、クウは人間だらけの町を出て、自分に適する世界を探しに行った。人間は過ちを犯して、クウに色々な苦しみをもたらした。せめて、これからは他の動物に同じ苦痛と悲しみを与えないために、今までの人間中心の考えを変えること、人間も自然の一部として、動物と共に生きることが求められている。そんなことをこのアニメは突きつけた。監督の原恵一さんや原作者の小暮正夫さんはすごい人だと思う。だが、日本にはこうしたアニメが作られるバックグラウンドがあることも、同時に感じる。
国土の約7割が森林で覆われている日本では、昔から自然と人間との共生が当然のことだった。今でも、子供の頃から動植物に親しむ教育の一環として、各学校に飼育・栽培委員会が設置されていると聞く。中国の学校でも決してできないことではないと思う。
いつか、動植物と人間が友達になれる日が来る。そんな希望を抱かせるラストシーンのクウの言葉が大好きだ。
「とうちゃん、おれ、人間の友達ができたよ。」