毎日がちょっとぼうけん

日本に戻り、晴耕雨読の日々を綴ります

「ボブ・ディランの『FOREVER YOUNG』、アーサー・ビナード訳『はじまりの日』に」No.1867

2017-01-31 00:35:55 | 

『FOREVER YOUNG』・・・普通に訳せば『いつまでも若く』ですよね。

周知のようにボブ・ディランは生まれた息子にこの歌を作りました。

アーサー・ビナード(Arthur Binard)はそれを『始まりの日』と訳しました。

ビナードさんは言います。

「生まれた自分の子どもに『いつまでも若くあれ』とか言いますか。それ、変でしょう? 

子どもがお父さんに言うなら別だけど。

僕がボブ・ディランのこの詩の日本語訳を考えていた時、

ちょうどアメリカの妹に電話したんですよ。

そしたら、妹の子どもの12歳のJamesが

小学校でこの歌を新入生に歌ってあげたと言うんです。

12歳が6歳、7歳の子たちに『いつまでも若く』なんて、普通言いませんよね。』

 な、なるほど~~!

絵本からちょっとだけ御紹介しますと、

『きみが 手をのばせば  しあわせに とどきますように

きみのゆめが いつか  ほんとうに なりますように

まわりの 人びとと  たすけあって いけますように

星空へ のぼる  はしごを 見つけますように

 

毎日が きみの はじまりの日

きょうも あしたも

あたらしい きみの はじまりの日・・・・・・ 』

「young」を「新鮮に、日々新しく始まる様子」と捉えれば、

父が息子に、年上の子が年下に歌いかけてもピッタリきますよね。

ボブ・ディランの原詩がシンプルで温かさに満ちていることも

改めて噛みしめることのできる名訳です。

 

この絵本、ビナードさんの訳詩もさることながら、

ポール・ロジャース(Paul Rogers)の絵の数々も、

ポピュラーミュージック好きな私としてはとても楽しめます。

しょっぱなのページでは、ボブが影響を受けたウッディ・ガスリーがギターを弾き、

別のページには親交のあったアレン・ギンズバーグが登場したリ、

4丁目の地下道前では、ジングル・ジャングルレコード屋がリヤカーに

カントリーのハンク・ウィリアムスハンク・スノウ

フォークのオデッタランブリン・ジャック・エリオット

ブルースのロバート・ジョンソン

お馴染みのプレスリーハリー・べラフォンテ等々のレコードを積んで佇んでいたり、

(この絵の人はひょっとして…)と発見するワクワク感に満ちています。

 

本の帯についてもビナードさんはエピソードを語ってくれました。

 

ボブ・ディランがノーベル文学賞を得る6年前に出版されたこの本は、

6年間で3万部売れ、ビナードさんはそのことにとても満足していました。

しかし、ボブが賞を得た後には、一週間で3万部売れちゃったのですって。

岩崎書店は授賞のことが分かったらすぐさま、

「ノーベル賞おめでとう」とかいう帯を考えたそうですが、

ビナードさんは頑なにそれを拒否して、上のようなものになったという経緯でした。

「だいたい、この帯を付けるのはボブ・ディランがノーベル賞を受け取るかどうかも

分からなかった時点のことです。

連絡もつかないし。

でも、これでボブ・ディランと私に共通点があると分かりました。

ボブも私も携帯電話を持っていないということです。」

(ボソッと)「何がノーベル賞だ……。」

ビナードさんもノーベル賞がなんぼのもんやねんという考えであることが

伝わってきました。

それにしても、あの沈黙の数週間、ボブ・ディランはどんなことを考えていたんでしょう。

きっと、受けようか、断ろうか迷っていたのでしょうね。

ときにノーベル賞授賞選考会が持つ一面的、政治的見方について、

ボブはとっくにお見通しだったはずですから。


見開きのページにサインしてもらってウキウキの私ですが、

右端のボブが持っている「DIG YOURSELF」のカードを

「ひとりを たのしめ」と訳するビナードさんの発想が好きです。

 

〈付録〉ボブ・ディランの原詩/アーサー・ビナード訳

May God bless and keep you always
きみが 手をのばせば
May your wishes all come true
しあわせに とどきますように
May you always do for others
まわりの 人びとと
And let others do for you
たすけあって いけますように

May you build a ladder to the stars
星空へのぼる
And climb on every rung
はしごを 見つけますように
May you stay forever young
毎日が きみの はじまりの日

Forever young, forever young
きょうも あしたも
May you stay forever young
あたらしい きみの はじまりの日

May you grow up to be righteous
やくそくを まもって
May you grow up to be true
うそをきらいますように
May you always know the truth
このひろい 世界が
And see the lights surrounding you
きみの目に 光りますように

May you always be courageous
背を まっすぐのばして
Stand upright and be strong
いつでも 勇気がもてますように
May you stay forever young
毎日が きみの はじまりの日

Forever young, forever young
きょうも あしたも
May you stay forever young
あたらしい きみの はじまりの日

May your hands always be busy
きみの手が ずっと はたらきつづけますように
May your feet always be swift
きみの足が とおくまで 走っていけますように
May you have a strong foundation
流されることなく 
When the winds of changes shift
流れを つくりますように

May your heart always be joyful
きみの 心のうたが
May your song always be sung
みんなに ひびきますように
May you stay forever young
毎日が きみの はじまりの日

Forever young, forever young
きょうも あしたも
May you stay forever young
あたらしい きみの はじまりの日

 

 

 

コメント (4)
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