数日前、2年「日本国家概況」の授業で、
日本の地形→火山の爆発・地震→3・11東日本大震災→津波→福島原発事故の話をしました。
今、二十歳前後の2年生が15歳頃にあった隣国の地震・津波・原発事故は、
彼女たち(プラス一人の彼)の記憶から消えかけていました。
授業で提示した津波、原発事故当時の映像は、初めて見る学生がほとんどで、
息を吞んで教室のスクリーンを見つめていました。
じつは、それらの映像は私も正視できず、長い間避けてきたものです。
5年前の3月11日、
中国の南昌市で地震・津波、翌日に福島原発の爆発事故をCCTVで見て、
(ああ、これで日本は終わりだ)と思いました。
酷いことになったことは、いくら鈍感な私でも分かりました。
それから、日本国内ではたくさんの努力、たくさんの我慢、たくさんの涙とともに
5年が過ぎました。
日常生活の中で、2020年のオリンピックが話題になることはあっても、
震災・津波・原発事故の被災者のことを考えての「復興オリンピック」だと
声高に言っていたことなど、どこかに置いてきぼりになっています。
授業で、震災や原発事故の復興は今だ道途上だというと、
中国の学生たちは驚きました。
そんなことは日本から伝わってこないからでしょう。
日本国内ではどうでしょうか。
「日本人なら被災者のことを思わない者など誰もいない。
だからこそ、オリンピックで復興推進なのだ」
と言っていたオリンピック開催支持者の人たちは、
今も、同じことを胸を張って言えるのか疑問に思います。
またしても、すり替えられ、ごまかされ、そのことに気が付かないで、
翳んでいく人たちの多いことが残念です。
逆に、希望の光は被災者自身の中にあるんだと、今、私は感じています。
東日本大震災から5年・・・被災ママたち、それぞれの今 「たくさんの大切なものを捨てて選んだのは、娘たちの命」
という記事で磯貝潤子さん(41歳、長女が中学3年生、次女が中学2年生)のお話を
読みました。
彼女は、福島で被災し、今は新潟の借り上げ住宅に二人の娘と避難しています。
夫は会社のある郡山と新潟の家を行き来するという二重生活です。
磯貝「初め、原発が水素爆発と言われてもちんぷんかんぷんで、一応、春休み中は窓を閉めて換気扇を止め、2人の子供たちは外に出さなかったけれど、事故当初、家近辺の線量は30μSvと発表されていたのが、4月の始業式の頃は3μSvに下がったので大丈夫なのかなと、歩いて学校に行かせてしまった。
……5月頃から娘が鼻血を出し始めたんです。それも大量で、1日に3~4回という日もあった。いろいろやってみても止まらない。そしたらね、かわいそうを通り越して頭にくるんですよ。『なんで出るの、止めて!』って。怒りの矛先がおかしいですよね。毎日ずっと悩んでいたから……もう、おかしくなっていた。」
学校でPTA副会長をしていたこともあり、放り出したら迷惑じゃないか、
家のローンも、娘のサッカーチームも、…と
不安でたまらないのに、事故が起きる前の生活を引き摺っていた彼女は、
1年後、ついに思い切って新潟の借り上げ住宅に娘二人と引っ越しました。
夫は、初め「テレビや新聞ではこんなに大丈夫だと言っているのに、
どうして潤ちゃんはそんなに心配するの?」と言っていたのが、
市民グループの情報メールを読むにつれて、共通意識を持つようになったそうです。
一年後の2012年5月、親子三人で甲状腺の検査に出かけました。
磯貝 1年間、自分ではちゃんと放射能対策をしていたつもりでした。でも結果は、3人ともたくさんのコロイドのう胞があったんです。私たちは“被ばく”したんだ、という事実を突きつけられたような気がして。「良性」と言われたけど、がん宣告されたようなショックでした。
磯貝 (誰もが)私と同じように、ある日突然、今の生活を奪われるかもしれない。私も震災前はおしゃれが大好きで、原発のことなんて考えたこともありませんでした。でも私たちが生きている足元はこんなにグラグラしている、と気づいてしまった。そうしたら沖縄や安保の問題にも黙っていられなくなってきて。周りにはちょっとヘンな目で見られるんですけど。
磯貝 私も今は、おしゃれしながら社会問題にも知識があって、ちゃんと自分の意見を言える、そういう女の人が本当にカッコいい、と思うようになりました。
磯貝 大事なものをたくさん捨てた。変えるしかなかったんです。悔しいですよ。でも以前の生活が忘れられなければ、ずっと苦しい。「みじめだ」「こうなったの誰のせい?」ではなく、私がこの生き方を選んだんだ、と決めて生きていくしかありません。
磯貝 それは命……やっぱり、私にとっては生死の問題だったから。娘たちが「死んじゃう!」と思ったんです。元気に生まれて、あんなに小さな指を一本一本数えたのに……。
―――写真・磯貝さんの言葉https://lee.hpplus.jp/kurashinohint/26730/3/より
どうして、ママたちが輝いているのか、分かる気がします。
命がだいじだということを、心底、無条件に知っているからでしょう。
自分が生み出した命を守るためにはどうしたらいいか、
一生懸命考え、行動しているからでしょう。
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