第2跳躍のスタートに立ったときも風は追っていました。
第一マークまでは、一回目より50㎝遠くなっています。
うまくいけば7歩目が第一マークにあたるはずですが・・・
とっとと。少し足りません。8歩目を大きめにとって、
さらに第二マークに向かうと、なんとか足があいました。
残りは12m40㎝、マークを気にしすぎてスピードは乗りませんが、
小刻みのリズムはできてきました。
残り6歩も、ややモモ上げ気味に走って板にジャストミート。
あ、またここで記憶がとぎれます。
腕を上げようとしていたのに、引き揚げ足を大きく振ろうと思ったのに。
空中で反って足を投げ出すつもりだったのに。
何もできずに地面は迫ります。
膝は曲がったまま中腰で着地、尻餅は免れましたが、滑り込むようなかっこよさはありません。
5m71㎝。ずいぶん伸びました。
一回目より、助走は向上しました。
ほかはバラバラでも、助走が良くなり踏み切りもジャストなら簡単に20㎝記録が伸びるのが
幅跳びです。
5m70㎝越えは2年ぶり、ちょっと気分はHAPPYです。
さあ、このあたりですぐ横のホームストレートを走る100mは、7組目に入っています。
私の100mは11組、急いでスパイクを履き替え、100のスタート地点に向かいます。
最終コールにも滑り込みセーフ。
すぐにスタートの順番が来たので、どきどきする暇もありません。
同走は4人、見ただけで走り慣れている方々です。手足がすっと伸びています。
位置についての声、ブロックに足をかけます。
ヨーイ、あれ?3コースの方がすっ飛んでいきました。
フライングです。本当にぎりぎりを狙ったようで、私は全く反応できませんでした。
これは手強い、と思った2回目のスタート、先ほどのフライングは伊達ではありませんでした。
臆せずすっとび、私tが体を起こす前に遙か前に行かれてしまいます。
でも、私には焦りすらありません。
どうやら幅跳びのジャストミートの踏み切りが、大腿部、ハムストリングの力を奪ったようです。
なかなか前へ押し出せません。それほど前を行く人たちから離れる感じは無いのですが、
とにかく最初の引き離しに負けてしまっては、勝ち目がありません。
一位12秒22,二位12秒53,私は三位で12秒63.向かい風0.7メートルでした。
走力不足に苦笑いしつつ、すぐに幅跳びのピットに戻り、3回目の跳躍へ。
不思議に股関節の張りがなくなり、動きがスムースになっています。
息はあがっていますが、気持ちよい助走ができそうです。
その感覚は間違いではありませんでした。
足は今回も合わせる努力をしつつ、踏み切り板の中央を踏み、ふわりと体があがります。
こんな時に腹筋を引き絞り、足を前へ投げ出せればいいのですが、
どうしても下へ落ちていきます。
雲から落ちる孫悟空のように着地、足が突っ張り棒のようになり、体が前へ転がりました。
記録は・・・5m74㎝。さらに伸びて、自然に微笑みが漏れ出します。
OK、マスターズ復帰戦は練習の間違いがなかったことを証明してくれました。
さらに4回目の跳躍を終えると、もう11時近く。次の年長者の幅跳びが10時30分開始の予定なのを大幅に回っています。
少し、汗、ではなく焦り。
予定では10時30分に競技が終わり、11時30分までに記録証をもらい、内房線に乗って
浜金谷へ向かうはずでした。
しかし競技時間がおして、記録証は100mのものだけ受け取り、幅跳びの賞状は諦めることにしました。
千葉を満喫するためにはやむを得ません。
と思い切れるのも、結果が出たからなのでしょうが。
陸上競技から旅気分に大転換!駅弁は「潮干狩り弁当」、ショウガ煮のアサリと、甘露煮の蛤がたっぷり。
レンコンのはさみ揚げも入っていて、千葉気分が盛り上がります。
車窓に緑と海が見え、千葉から1時間の普通電車の旅を終えたのは浜金谷。
陽は変わらず照りつけます。
向かうのは標高329mの鋸山。
駅から出てしばらく歩くとその名前の由来がわかります。
屹立する岩壁が、緑の上にのぞきます。
直線に区切れれ、幾本もの方丈に見える様子が鋸の歯に見立てられたそうです。
凝灰岩の質が房州石とも呼ばれ、石切場になっていたという歴史の産物。
山道にはいると、確かに岩の露出した道が続きます。
昨日の千葉県立博物館・生態園で体験したとおり、照葉樹と落葉樹が周りを覆い、鳥声もかまびすしい。
ただ山路は急なので汗はだらだらと流れ下ります。
まさしく切って通した大岩の切り通しを抜けるとこjんな道しるべが。
「地獄のぞき」
しかしそう脅されたすぐ後に出てくるのは、日本寺の山門と岩に掘られた観音様です。
よほど危険な石切場だったのではと逆に想像してしまうほど、
岩にほほえむ観音様は生身の力を持っています。
端正な芸術品というより、願いがむき出しに成っている感じが見えるのです。
だからこそ、その先には地獄があるのでしょうか。
そしてまた、その名から裏切られる絶景。
房総丘陵のしなやかな背は緑に覆われ、東京湾から太平洋へとひらいた海原が遠景を飾ります。
谷津には田んぼ、川沿いに家並み。
天国からこの世を見渡すような気持ちにすらなります。
麓からここまで1時間、今日の気温では汗がリットル単位で抜けましたが、
春秋なら体が温まったところでこの絶景に恵まれ、空いたおなかに握り飯がうまい、というほどの位置取りです。
ただ今日の私たちは、浜金谷から出発して、標準コースタイムが2時間50分、でも次に保田で乗る特急まで3時間をしか
計算していないぎりぎり歩行なのです。
すぐに下り路に入っていきますが、ここでも修行は続きます。
岩の祠が至る所に着られて、羅漢像が並びます。
走り織り、手を合わせて過ぎゆく旅人二人は小天狗か?
くらい彼女も調子よい足取りで、コースタイムは半分で済みました。
(地をはう根を軽やかに走り抜ける、ふさおまきメス)
下山口近くには奈良の大仏山より背が高いという、涅槃の方が待っていてくださいます。
丁寧に手を合わせ、山であり寺域を後にすると、
路は平らになります。
踏み切りを渡れば駅はあと1キロほど向こう。
時間は1時間残りました。
そこで、少し足を伸ばして保田海岸へ行くと、気分はまた180度展開します。
ビーチです。水着の家族連れが走ります。
肌がこんがり焼けた、引き締まった体のライフセーバーが笑顔で、でかいリュックを背負った夫婦を迎えてくれます。
一言「楽しんで!」
かっくいい!
吹く風に体は心地よく、裾をまくり上げた足を水につけると、むくみもすっとひいていきました。
博物館に窓からの花火、走り幅跳びで躍動して、特急旅行を楽しみ、
山に登って修行のような祈りを体験、最後は海水浴雰囲気。
駆け回る南米ザル夫婦にふさわしい、あわただしくもたっぷり膨らんだ千葉旅行でした。