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『眠れる森の美女』 青い鳥とフロライン姫
読んでいただく以上、バレエの話ばかりはよくないと思っている。
どうにかしたいと思ってはいる。
今日はその埋め合わせとして、最後にドーノワ夫人作の「青い鳥」の話の筋を書いた。メーテルリンクに上書きされてあまり知られていないと思うので。
娘が大学生になって家を出た今、バレエの感動を伝える相手が身近にいない(夫はバレエは好きだがもちろんキャーキャー喜ぶわけではない)。
感動は誰かとシェアしてこそ。だからわたしはこうしてボキャブラリーの少なさや修辞の技術のなさに悩まされながら、自分宛に感動を書き綴ることになる。
願わくばその向こうに、どなたかバレエや演劇ファンの方がおられて、同意ではなくとも「そういうのもあるかもね」くらいに思って下さっていたらありがたい。
土曜日のマチネでもロイヤル・バレエ『眠れる森の美女』公演も見た。主役の2人はMalianera NunezとVadim Muntagirov。
木曜の夜の公演を、わたしの言語能力の限界で絶賛したため、もうMalianera NunezとVadim Muntagirovについては書くことがない(笑)。
この主役二人の出来のむらのなさというのはそういうことなのであるな。
ローズ・アダージョでは毎回泣かされそうになる。憎いなあマリアネラ(上写真。2幕目の幻視のシーン。ROHから拝借)。
今回は高田茜さん(上写真。Dancetabから拝借)以来、久しぶりに素敵なPrincess Florine(青い鳥のフロライン姫)を見た。Melissa Hamiltonの代役でMayara Magri。
Florestan and His Sisters 王子の兄妹の踊りの佐々木万璃子さんもとてもすばらしかったです!
......
バレエ『眠れる森の美女』の3幕目、オーロラ姫とフロリモンド王子の結婚式には、同じくペローの童話集から他のお話の主人公たちがお祝いに現れる。
いろいろなお話の世界が交差し、とても楽しい。
『赤ずきんちゃんと狼』
『長靴をはいた猫と白猫』
『青い鳥とフロライン姫』
は独立した踊りを踊り、背後には『シンデレラと王子様』『青髭と新妻』『美女と野獣』も登場する。
『赤ずきんちゃん』も『長靴をはいた猫』も有名なお話だが、『青い鳥』はメーテルリンクの優れた話に上書きされて、ほとんど知られていないような気がする。
もとは17世紀に妖精物語を多く編んだドーノワ伯爵夫人の物語だ。
......
昔々あるところに裕福な王様がいました。
王様は最愛のお妃さまを亡くしたばかりでしたが、間もなく他の未亡人と結婚します。
王様にはフロライン姫という姿も心も美しい娘がいました。
新しくお妃になった女性にはトゥリットン姫というわがままで自分勝手で醜い娘がいました。
新しいお妃様もトゥリットン姫も、美しいフロライン姫に嫉妬するようになります。
ある日、王様は年頃になった姫たちを結婚させることにしました。
ちょうどその頃、シャルマン王子が王国を訪れます。
お妃様は自分の娘であるトゥリットン姫をシャルマン王子と結婚させようと躍起になり、フロライン姫の侍女をだましたり、賄賂を渡したりして、フロライン姫のドレスや宝石でトゥリットン姫を飾り立てます。
それにもかかわらず王子様はフロライン姫を一目見て恋に落ちてしまいます。
お妃様とトゥリットン姫は嫉妬心から、王様にはフロライン姫を塔に閉じ込めるよう、シャルマン王子にはフロライン姫の悪口を吹き込みます。
お妃様はシャルマン王子に多くの贈り物をしますが、王子はまるで受け取ろうとしません。
怒ったお妃様はシャルマン王子に、王子が王国を去るまでフロライン姫は塔から出られることはないだろうと告げます。
王子様はフロライン姫に一目会えるようお妃に願います。
お妃様はその気持ちを利用し、暗闇の中で王子様にトゥリットン姫を会わせ、その姫がフロライン姫だと勘違いした王子は結婚を誓ってしまいます。
トゥリットン姫は自分のゴッドマザーであるマジラとたくらみ、王子と結婚式を挙げようとしますが、策略に気がついた王子は受け入れません。
マジラは王子が結婚の誓いを破ったと責め、それを理由に彼を青い鳥に変えてしまいます。
お妃様はトゥリットン姫に花嫁衣装を着せ、王子がトゥリットン姫と結婚することに決めたと嘘をつきます。
王様にはフロライン姫が王子様に恋狂いしているため、正気に戻るまでは塔に閉じ込めておくべきだと忠告します。
青い鳥は塔に閉じ込められたフロライン姫を訪れ、真実を告げます。
青い鳥はそれからひんぱんにフロライン姫を訪れ、たくさんの宝石を贈りました。
お妃様はトゥリットン姫のために婿探しをしますが、誰もトゥリットン姫と結婚しようとはしません。
一方、お妃様が塔の中のフロライン姫を訪れると、フロライン姫は青い鳥と楽しく歌っているではありませんか。お妃様はフロライン姫が反逆行為をしていると証言します。
この後、フロライン姫はしばらく青い鳥を呼べませんでした。近くでお妃様のスパイが見張っているからです。
しかしある夜から、スパイが寝ている間に、青い鳥を呼ぶようになります。
スパイはやがてそのことに気がつき、お妃様に告げ口します。
お妃様は青い鳥が止まる木に、とがったガラスや金属の仕掛けをし、青い鳥が怪我をするように細工してしまいます。
傷ついた青い鳥はもう飛ぶことができません。飛べなくなった青い鳥はフロライン姫を訪れられなくなり、フロライン姫は青い鳥に裏切られたと思います。
幸運にも魔法使いが傷ついた青い鳥を救います。
魔法使いはマジラに、青い鳥を人間の王子に数ヶ月間の間だけ戻し、もしもまだトゥリットン姫を拒絶するならば、また鳥の姿に戻せばいいのではないかと説得することに成功します。
ある日、王様が亡くなりました。
王国の国民はフロライン姫を塔から解放するよう要求し、お妃様を殺してしまいます。
トゥリットン姫はマジラに助けを求めます。
フロライン姫は女王になり、農婦に身をやつし青い鳥を探し始めます。その旅の途中で老女に化けた妖精に出会います。
妖精は、青い鳥はトゥリットン姫との結婚を承知して、そのひきかえに人間の王子の姿に戻ったのだと告げ、フロライン姫に4つの卵を与えます。
フロライン姫は一つ目の卵を象牙の塔を登るために使い、二つ目の卵から出てきた鳩の引くチャリオット(馬車...でなくてこの場合鳩車ですな)でシャルマン王子の王宮に行きますが、農婦に化けたままでは王子様に近づくことができません。
フロライン姫は青い鳥が贈ってくれた一番素晴らしい宝石をトゥリットン姫に売ると持ちかけます。トゥリットン姫がその宝石の価値を確認するために王子に見せると、王子はそれがフロライン姫に送ったものであることに気づき、深く悲しみます。
フロライン姫は、宝石に「こだまの部屋」で一夜過ごす権利を交換条件としてつけました。その部屋で話されたことは全て王子の部屋に筒抜けなのです。
その部屋で、フロライン姫は自分を置いて去ってしまった王子を夜通しとがめ嘆き悲しみますが、王子は眠り薬を飲んでおり、何も聞こえていませんでした。
フロライン姫が三つ目の卵を割ると、子ネズミに引かれた乗り物が現れました。フロライン姫はそれと交換に「こだまの部屋」でまた一夜過ごし、一晩中嘆き悲しみます。でも、それを聞いたのはお小姓だけでした。
次の日、最後の卵を割ると6羽の鳥のパイが現れました。小姓にそれを与え、引き換えに今夜は王子に眠り薬を与えるなと言います。フロライン姫はその夜も「こだまの部屋」で一晩中嘆きます。
王子様はついにフロライン姫の声を聞き、「こだまの部屋」に走っていきました。王子様はすぐにフロライン姫に気づき、2人は再開を喜びます。
魔法使いと妖精は、マジラが彼らに手出しできないよう保障します。
トゥリットン姫がシャルマン王子とフロライン姫の仲を邪魔しようとしたとき、彼女は雌豚に変えられてしまいました。
シャルマン王子とフロライン姫はいつまでも仲良く暮らしました。
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