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バレエ『冬物語』 春の来ない冬はない




The Winter’s Tale『冬物語』はシェイクスピア原作のバレエだ。

初演は2014年、あれはもう10年前...
Christopher Wheeldon が制作振付した 3幕作品は、1965年のケネス・マクミランの『ロミオとジュリエット』以来のシェイクスピア作品であり、英国ではやはり期待が大きかった。

10年前の初演時にこの作品を見た、当時14歳だった娘は、Christopher Wheeldon作品といえばのAlice's Adventures in Wonderland『不思議な国のアリス』に感銘を受けた後だったため、この作品を絶賛した。

14年しか生きていない人間に、この作品のどこがそれほど感動的だったのだろうか、と考えた。
最近、娘に質問してみたものの「覚えていない」と言う...

わたしは子供にはまだ早いとか、子供にはわからないだろうなどとかは、あまり思わないし、子供向きか難解かを基準にして娘に紹介したことはない。
小説でも映画でも芸術でも人生のその時点でしか受けられない衝撃はある。「全くわからない」というのは貴重な体験だ。
例えば、小学生だった娘にある小説を紹介したとき、夫は「この本はフランス革命が何か知らないと面白くないでしょう」と言ったが、わたしは「この本を読んでフランス革命が何かを知るのです」と言った。今もそう思っている。


今シーズン再び The Winter’s Tale『冬物語』を見て、わたしはこの作品の激しいコントラストに衝撃を受けた。
嫉妬と猜疑心で何もかも失うシチリア王の世界は「冬」、暗く、冷たく、まるで地下のようだ。王の狂気を表現する蜘蛛のように這う動き。
彼の子の世代が生きるボヘミアは、光と彩り、音楽、喜びと希望に満ちた「春」。地上の世界。螺旋のように複雑で、蝶のように飛んでいってしまうようなジャンプ。

このふたつの世界を取り持つのは、王妃の侍女頭であり、彼女は二つの世界を行き来する。さしずめギリシャ神話の「ヘカテー」。

ならば王妃は娘ペルセポネを奪われるデメテルと...つじつま合うなあ。


人間の営みには冬がある。しかし、必ず春は来る。
人間は成長して、次の次元に繰り上がらなければならない。
こういったストーリーの原型は世界中どこの神話、民話やおとぎばなしにも見られる。
とすれば、14歳の娘が惹かれたのも当然かもしれない。

下敷きにギリシャ世界があるのがわたしがこの作品を好きな点でもある。
気のせいではなく、衣装や舞台装置や登場人物の名前もそうなのです...


最後になったが、昨夜もわが女神Marianela Nunezは素晴らしかったです(王妃役)。
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