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cinderella


Luca Acri, Gary Avis (Stepsisters), Vadim Muntagirov (Prince) and Marianela Nunez (Cinderella)
in Cinderella. Photograph:@Tristram Kenton/the Guardian



シンデレラ、きらめくフェアリー・テイル。
暖炉の灰(<「シンデレラ」の名前はここからきている)の中の燃えカスのような希望、清く正しく美しく生きる先に約束された幸福。

一方で原話は怖い、おとぎ話のひとつでもある。


ボロをまとっていても内側から発光するシンデレラの美しさ、シンデレラが未来を切り開くきっかけを与えるまばゆい妖精たち、白銀色に輝く優雅な王子様。

もう一方には、おとぎ話の残忍さや不穏さを底に隠すプロコフィエフの音楽、英国伝統のデフォルメの効いた「パント」(英国のパントマイムPantomineは、流行歌やダンス、醜悪な誇張やジョークなどが盛り込まれた大衆的な笑劇のこと。絶大な人気を誇る。英国では無言劇のことは単に「マイム」と言われる)...

の2つの車輪でこの物語はすすんでいく。

秀逸だな。


1948年にフレデリック・アシュトンによって製作された『シンデレラ』が、新プロダクションになってロイヤル・バレエに戻ってきた。

先日のリハーサル、オープニング・ガラに続いて3回目のMarianela Nunez・シンデレラ・バージョンを見た。わたしはもう一枚チケットを持っている...

Marianela Nunezの、ロイヤル・バレエのダンサーとしての25周年を祝し、前回のガラでは銀メダルを授されるというサプライズもあった。


Cinderella Photograph:@Tristram Kenton/the Guardian



新プロダクションで一番成功しているのはなんといっても舞台芸術だと思う。
現代の映像技術を駆使して、妖精の魔法の粉がまぶされた、ファンタスティックで、どこかにある遠い世界がオペラハウスの舞台に再現されてすばらしい。

内容は、バレエよりも「演劇」の方に特に比重が大きいことが挙げられるだろう。
英国バレエは伝統的に「演劇性」「感情の表現」を大切にしている。この点が例えばロシア・バレエのファンにロイヤル・バレエが腐される点でもある(わたしはどちらも好きだ)。ロイヤルの「顔芸」が気に入らない、という意見はしょっちゅう見かけるし、まあそれくらいしか批判できる点がないのでは、と思ったりもする...
(逆にロシア・バレエには「(魂もない)ダンボールの切れっぱしのような」などという非難もあるのでお互い様である)


しかし、それでも、今回ばかりはわたしも「踊りが少なーい!」と思う。バタバタ走り回っているのが多すぎるように感じてしまう。
この作品の魔法を担保しているのは、ひとえにNunezとVadium Muntagirov(王子)のパ・ド・ドゥの完璧さ、正統さにある。これによって魔法がかけられている。
そうでなかったら...たちまち消えてドタバタのカボチャにかえってしまいそう。


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