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Brugge Style
魔法のランプから出てきた街
去年は南回りでインドネシアへ行った。
今年も南回りでベトナムへ。
遠い、遠すぎる。
横臥しても飛行機の中では眠れないわたしにとっては辛い長旅だ。
いいなあ、日本からベトナムは5時間ほどで...
今回、なぜか往路の後半(ドーハ・ホーチミン間)は特にほんとうに辛く、もう20時間かけて東南アジアに行くのはいいや、エキゾチズムを求めるならモロッコやトルコ(ロンドンから3時間ほど)があるじゃない...などと思ったほど。
去年、ドーハ空港(カタール・エアのハブ。写真)の、砂漠の中に忽然と、魔法のランプから現れたかのような、蜃気楼のような豪華さ、大きさに度肝をぬかれたのだったが、今回降り立ったら、またまた面積が増えていて驚いた。
広さも設備も清潔さも、ブランドのお店の博覧会状態も、ラウンジの数やサービスも、ロンドン・ヒースローのターミナル5ドバイを圧勝している。
ヒースローの他のターミナルや、ましてやロンドン・ガトウィックやロンドン・シティ空港なんかはもう足元にも及ばない。
広さといったら、去年使ってとても気に入った静かなラウンジに行きたかったにもかかわらず、往路時はとうとうたどり着けず、適当なところで入ってしまったほどだ。
係員の方はあちこちに立っておられるものの、彼らさえもわたしたちが目指すラウンジがどこにあるかご存じない。「ラウンジならルイ・ヴィトンの横のエレヴェーターから乗るのが一番いいですよ」などとご自分のおすすめを、好意からだろうが誘導しようとなさるくらい。
ペルシャの魔法のランプでも持っているんじゃないか、ドーハの支配者は...
(アラブといえばアラビアン・ナイトでしょうという文化的固定観念もどうかと思うが)
わたしが魔法のランプを持っているとしたら、何をするだろうとしばし真剣に考えてしまった。
労働者の権利が守られた街(ドーハは外国人労働者の酷使によって成り立っている街だからして)かな、やっぱり。
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あと何回、碧色の夏を迎えられるのだろう
あと、何回夏を迎えられるのだろう?
この絵葉書のような風景を見られるのは?
自分の寿命だけではない。
人間が引き金になって起こす自然災害、疫病、戦争、「資本」の無限運動などのためだ。
夫はわたしに聞く。
なぜ何枚も同じ風景の時刻の写真を撮るのかと。
それはねえ、わたしがいなくなれば、この風景は消滅してしまうからですよ。
これは客室の単なるシャワー室の壁。この色! こういうのは夫には「?」だが、わたしはこの色をどうしても残したい...
残したい色、日の出と日没。
ベトナムの日没の写真はもう載せたので、上の写真は夜明け。南シナ海、午前5時。
部屋のテラスに出ると、外の空気はまったく冷えていない。プールの水さえ温泉のよう。
ガラス窓には、夜の間さまよって行き場を失った水の雫が...
去年、インドネシアでレヴィ=ストロースの、なんども読み返してボロボロになった『悲しき熱帯』を再読したのだった。あの夏は、どこに行ってしまったのだろう...
わたしが私淑するレヴィ=ストロース先生は、日没には何ページも割くが、夜明け、日の出(日はまた昇る)には非常にそっけない。
こちらは日没((日没はガムランの調べ)。レヴィ=ストロースの文章は、何度読んでも、わたしはうっとりする。
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ベトナム珈琲、砂時計のように時を刻む
友人が「美味しい写真を載せてよ!」と言ってくれたので...
とりあえずは目の前のベトナムコーヒーを!
この銀色のフィルターから落ちるコーヒーの黒い水滴は、砂時計のようにゆっくり時を刻む。
ベトナム時間そのもののようだ。
このフィルター、英国に持ち帰ろうかと思うものの、家ではネスプレッソが淹れてくれる間すらも「早く!」と思うほどなので、使わないかなあ。
わたしはコンデンス・ミルクは大好きだが、甘い飲み物が苦手なので、氷水で調整しつつブラックで。アイスコーヒーってなぜこんなにおいしいの。
また、北部で人気だという塩クリーム・コーヒーも美味しいと聞いたので試してみた。ほんとうに美味でクセになる。
ヘビークリーム100に対して1の塩を加え、泡立てる。グラスに流す。コンデンスミルクを入れる。コーヒーを注ぐ...という手順だそう。
英国に帰ってからも作ってみようと思う。
飲み物は、このビーチハウスで作ってくれる、しょうが系のソーダもたまらなく好きだ。
ここにはライムも、しょうがも、ミントも、レモングラスも、わたしが好きな飲み物に不可欠な食材がいくらでもある。
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貝殻は遠い夏の思い出
少女の頃、海辺で貝殻を拾うのが大好きだった。
真珠色の月が落としていったかのような、この世にはこんなに美しいのものがある!
しかも、いくつ拾っても、いくつ自分のものにしてもいいのだ!
特に巻貝はレアで、欠けていない綺麗なものを見つけたら幸運。
あんなに大切にしていた貝殻、どこにやってしまったんだろう。
大人になるということはそういうことなのか。
今でも、半透明の、陽に透ける貝殻に魅了される。
砂を落として、客室のテーブルの上に並べて眺める。
海辺で貝殻を探している小さい少女を思い浮かべながら。
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月の入江
昨夜、7月3日は満月。
十四夜の月があまりに美しかったので、十五夜を楽しみにしていたのだ。
先日、ベトナム南部のメコンデルタに名残を惜しみ、南シナ海に向け約700キロを北上した。
メコンデルタから、タクシーで3時間半かけてホーチミン市、ホーチミン市から飛行機で1時間、ホテルからの迎えの車で1時間半かけて半島に到着。
メコンデルタのホテルは一島丸ごとホテルだった。
南シナ海のこちらは半島の浦(入江)が丸ごとのホテル。
長いプライベート・ビーチの片隅に、岩に囲まれたさらに小さな入江があり、月見のために、夕方に使用したアフタヌーン・ティーのテントをそのまま残してもらった。
真珠色の月がしずしずと現れ、思わず歓声を上げた。
夕暮れてからも満ちゆく潮を渡り、蟹を追いかけつつ、海岸線を散歩した。
夕食を終えるころには高くなった月が...
部屋から眺める海の上に大きな月が煌々と輝き、手をのばして取ってしまいたくなるほど美しかった。
月光浴は身体にいいという説と、悪いという説があるらしい。
少なくとも、人間は美しいものを見た後は、他のものも美しく見えるそうなので、そういった効能はあるに違いない。
沈むまで見ていたいと思いながら、ペライア演奏の『月光』を大音響で聞く。すでにうとうと。
蒸し暑くさえなければ外のデッキチェアで眠るのに。
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