確か、昔、自動車講習で配本される「交通教本」や「安全運転のしおり」などが、「隠れたベストセラー」と聞いたような記憶が・・・
「東京の交通安全」と書かれた「安全運転のしおり」をパラパラとめくってみた。p.2には「全国の交通事故」が記載されており、令和元年の死者数は3,215人、負傷者数は461,775人となっています。「都内の交通事故」について、死者数は133人なのですが、小平市は0人です。多いところを見ていくと、足立区8人、江東区8人、大田区7人、葛飾区6人、板橋区6人、杉並区6人、世田谷区6人となっています。江東区は前年1人から+7人の8人になったそうです。
東京都における亡くなった人のうち55人(41.4%)が65歳以上。高齢者の死亡が特徴的です。そのうち24人(43.6%)が歩行にて横断中です。高齢者の横断には細心の注意が必要です。
p.6には「都内におけるシートベルト着用状況」が書かれています。一般道29か所で警察庁とJAFが共同で実施した調査によると、着用率は「運転者99.1%」「助手席同乗者96.3%」「後部座席同乗者34.2%」だそうです。高速道路になると、運転者と助手席同乗者は一般道とほぼ同率ですが、後部座席同乗者は73.5%と跳ね上がります。
p.15には「飲酒運転は絶対にやめよう」として「許しません 飲んで乗る人 飲ます人」という歌とともに、「飲酒運転は悪質な犯罪です」と断罪しています。1口、1滴でも飲んだら運転してはいけません。例として「酒酔いしていた者が不注意により死亡事故を起こした上、救護義務違反(ひき逃げ)をした場合」書かれており「酒酔い運転35点」+「死亡事故20点」+「救護義務違反35点」=90点の違反となり、「免許取消し・欠格期間10年」に相当するそうです。飲酒を助長する行為も絶対に禁止で罰則が書かれています。
p.16には「渋滞のない快適で安全な道路のために」ということで「一台の 駐車が招く 事故・渋滞」と詠まれています。渋滞防止のポイントは「交差点付近の駐車をやめる」「荷物の積卸しは、荷捌きスペースや駐車場を利用する」「バスや電車など公共交通機関を利用する」「出掛けるときは、交通情報を十分活用する」ことだそうです。
最後に、「交通教本」の方からも1つ。p.41の東京都の上原順一郎さんが書かれた「交通犯罪に遭って五年」という被害者の手記。自転車で帰宅中の娘さんが酔っぱらい運転で後ろからノ―ブレーキで追突されお亡くなりになったという手記。犯人はエアバッグで助かったにもかかわらず、救命措置をすることなく、のうのうと煙草を吸っていたそうです・・・パトカーに乗せられた時は両手でVサイン。裁判中も、一言も謝らず、涙も流さず、頭を下げることもなく、自分さえ良ければという様子。「被害者は好きなことが言えるが、被害者は何も言えない」という記載が、本当に、交通被害に遭われた方のご無念を語っています。そして、犯人はわずか懲役5年。かわいい娘さんを奪われた上原さんの悲痛を思うと、胸が張り裂けそうです。
そして、「今の社会はまちがっている。保護されるのは、被害者の方。今の社会は保護されているのは、加害者の方。事件が起きると生い立ち、家庭環境が論じられるが、被害者はかやの外。精神鑑定をして、クロと認められれば、罪に問えない。人を殺しても、運転免許を再挑戦すれば、取得することができる。こんな社会、どう考えてもおかしい。」という手記は、現実社会のジレンマを物語ります。本当は被害者が保護されなければいけないのに、加害者の人権やプライバシーばかりが保護されている・・・そのように語る上原さんを誰が否定できるでしょう。
「生い立ち」って、本当に情状酌量しなければならないのか?というのは私も同じ。「貧乏に生まれたら人を殺しても情状酌量」「親から虐待されたなら人を殺しても情状酌量」・・・それって、被害者は、どうすれば納得できるというのでしょう?あるいは、精神鑑定で情状酌量された方が、同じ災厄を再現しないという保障は誰が担保してくれるのでしょう?そんなジレンマや不安を持っている私はおかしいのでしょうか。
領収書からすると、わずか500円の講習でしたが、考えさせられることがいくつもあった貴重な体験だったと思っています。