ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

社会保障と税の一体改革大綱

2012年02月18日 10時09分59秒 | 国際・政治

 今日の朝日新聞朝刊11面13版に、「社会保障と税の一体改革大綱」の要旨が掲載されています。また、日本経済新聞には、大綱の要旨などは掲載されていませんが関連記事がいくつも掲載されています。

 小泉内閣時代に年金改革が行われ、100年安心などと言われたのがほんの束の間だったことを思い出すと、今回の改革もどうなるのか、予断を許さないと言うべきでしょう。この大綱の第1部が「社会保障改革」、第2部が「税制抜本改革」とされていることからして、社会保障改革に際して必要となる財源の確保については、消費税の税率上昇によることが明らかなだけに、果たしてどこまで消費税の税率が上げられるのか、また、所得税、法人税、相続税はどうするのかを、慎重かつ急速に検討しなければならないでしょう(矛盾する言葉を使いましたが、それだけ、財政状況が良くないということでもあります)。

 この大綱には「1989年に消費税を導入して97年に税率を引き上げ、99年度予算からは高齢者3経費(基礎年金、老人医療、介護)の国分の消費税収を充てる福祉目的化を行った」という一文があります。消費税法などにはこの趣旨が定められておらず、毎年度の予算を読んでもこの趣旨は明確にされていないので、疑問は湧きます。予算総則にも示されていなかったはずです。そうなると、特別会計予算の話になるのですが、どうなのでしょうか。

 今回の改革で、以前から主張されていた消費税の目的税化が示されています。「社会保障の機能強化・維持のために安定した社会保障財源を確保し、同時に財政健全化を進めるため、消費税率を段階的に引き上げる。税収(現行の地方消費税分を除く)は使途を明確にし、社会保障財源化する」。一方、「今回の改革は、消費税率の引き上げにとどまらず、新たな日本にふさわしい税制全体の姿の実現を目指す。税制全体として再分配機能の回復を図る」とも述べられています。一つのポイントは、国内の側面、国際的な側面の両方を考慮すると法人税ですが、「11年度税制改正で税率を下げることとしており、復興増税の終了後(15年度以降)に実現するが、その後も引き続き雇用と国内投資拡大の観点から課税のあり方を検討する」と記されているに留まります。法人税の引き下げが経済に「活力」を与えるなどという議論については疑問も示されていることには、注意を要します。

 総じて、少なくとも税制抜本改革の部分については、個人は増税、法人は減税という方向性がほのめかされているように読めます。地方税制については、朝日の記事では省略されている部分が多く、しかも「地方法人特別税と地方法人特別譲与税は抜本的に見直す」とだけ書かれていたりするのでよくわからないのですが、法人事業税や法人住民税のあり方が法人税に左右されることからすれば、国税と同じく、個人は増税、法人は減税ということになるのでしょう。

 (但し、個人は増税、法人は減税、というのは、あくまでも直接税に着目して記したことです。消費税は個人であれ法人であれ、事業者が納税義務者ですから、消費税率の引き上げは法人についても増税を意味することとなります。)

 現在の政治状況を見る限り、上記のような改革が円滑に進むとは考えにくいのですが、「待ったなし」という状況にあるのは事実です。多くの資産を保有する富裕層が日本から資産や資金を移動してしまうという懸念もありますが、所得税や相続税の増税は必要となるでしょう。

 妙薬があれば、とも思うのですが、あるとしてもなかなか見つからないのが現実です。

コメント
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