ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

JR北海道の車両老朽化問題

2018年08月06日 18時28分29秒 | 社会・経済

 札沼線の一部区間(北海道医療大学〜新十津川)、石勝線夕張支線、留萌本線などの廃止が確定的になりつつあるなど、非常に厳しい経営難の状況にあるJR北海道ですが、車両の老朽化問題も深刻です。2016年度のダイヤ改正で大幅な減便が行われたのも老朽化問題が大きな一因であり、改善の見込みは全く立たないようです。8月4日の11時32分付で北海道新聞社が「JR北海道、普通列車用の気動車更新見送り 資金確保見通せず」(https://www.hokkaido-np.co.jp/article/215441?pu)として報じていますが、同社のサイトではログインをしなければ全文を読むことができないので、Yahoo! Japan Newsに8月6日11時24分付で掲載された「JR北海道、車両更新見送り 一般気動車 資金確保めど立たず」(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180806-00010001-doshin-hok)という記事によりつつ、進めていきます。

 JR北海道にも電化区間はありますが、それは北海道新幹線全線、函館本線の函館〜新函館北斗、小樽〜旭川、千歳線全線、室蘭本線の室蘭〜沼ノ端、札沼線の桑園〜北海道医療大学、海峡線の全線、宗谷本線の旭川〜北旭川だけです(漏れがあるかもしれません)。また、宗谷本線の電化区間は、単に旭川駅構内にあった旭川運転所が同駅高架化事業に伴って北旭川駅付近に移転したためのものであり、基本的には回送電車しか走りません。従って、この区間の普通列車は気動車であるということになります。

 以前購入した新書で(タイトルを覚えていません)、JR北海道がジョイフルトレインなどを積極的に導入したことについて評価する内容を読みましたが、結果的に誤っていたと評価せざるをえないでしょう。当時もそのような評価が存在したのではないかと思うのですが、あまり見たことがありません。同じようなことはJR九州の「ななつ星」にも言えると思うのですが、いかがでしょうか。ともあれ、JR北海道については、ジョイフルトレインなどを優先してローカル運送用車両を更新してこなかったツケがまわってきたということでしょう。あるいは、路線の整理をもっと早くから進めるべきであったとも言えます。

 国鉄のほぼ最後と言える頃に、キハ54形500番台が北海道地区に導入されました。これは、北海道の脆弱な経営基盤を見越したものであり、今考えても見事なものです。また、JR北海道は、札幌地区の輸送強化などを目的として電車や気動車(函館本線用のキハ201系、主に札沼線用であったキハ141系)を増備しました(キハ141系は客車からの改造)。しかし、他の地区のローカル輸送用としてはキハ150形くらいです。日高本線用のキハ130形は設計ミスと言えるようなもので10年程で廃車となり、キハ160形も1両だけしか製造されず、既に廃車となっています。

 こうして、キハ40系が多く残ってしまいました。126両です。キハ40系は1977年から1982年まで製造された気動車で、車体の重さとエンジン出力の釣り合いが取れておらず、非力な車両でした(私も九州で何度かキハ40系に乗っていますが、エンジン音が大きいのに鈍足で、それ程急ではない勾配でも力不足は明白でした)。国鉄時代の気動車は、当時ですら既に時代遅れのディーゼルエンジンを積んでいるものが多く、キハ40系についても、多少はエンジンの性能が改善されているものの根本的な向上につながっていません。後に改造されたりもしていますが、年数は確実に経過していました。

 勿論、北海道に導入されたキハ40系の車両については、寒冷地対策が施されています。機関の換装なども行われています。しかし、寄る年波には勝てません。まして自然条件の厳しさがあります。最も古ければ40年くらいの車齢ですから、本来であればとっくに更新されていておかしくないのです。

 この他、先に記したキハ54形500番台も、道北、道東のローカル輸送に貢献してきたとは言え、また、キハ40系よりは格段の性能向上を果たしたとは言え、製造されてから既に30年が経過しています。

 上記北海道新聞社記事によると、JR北海道が保有する「一般輸送用」気動車は205両で、このうち、車齢が29年以下であるものは41両しかありません。キハ40系以外に形式は示されていないのですが、30年超である164両の中にはキハ40系、キハ54形500番台が入るのは間違いありません。また、キハ141系も入るものと思われます。元はと言えば1970年代に製造された50系客車を改造したものですから、客車時代から通算すれば40年前後となります。車齢が40年を超えるものが北海道に11両あるというのですが、キハ40系とキハ141系でしょうか。

 実は、JR北海道も新車を準備しています。H100形といい、従来の液体式気動車とは異なる電気式気動車です。既に2両が試験走行をしているのですが、増備の目処が立ちません。お金の問題です。

 7月27日に、国土交通省はJR北海道に対して、2年間(2019年度および2020年度)で400億円程度の支援を行うことを表明しました。しかし、これで車両更新を何処まで行うことができるかはわかりません。車両だけを更新する訳に行かないのは当然であるためです。

 今後の動向にも左右されるとは言え、JR北海道の少なからぬ路線が廃止に至ることについては蓋然性を増したと言えるでしょう。合理化などのために減便を選択するとしても、その程度などによっては(今の札沼線末端区間の一日1往復というように)公共交通機関としての使命を放棄すること以外の何物でもなく、ならばすっぱりと廃止するほうがよいのです。後腐れもなくなるからです。


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