先週の月曜日(4月19日)に小テストを行いましたが、項と号との区別ができていない人が多く、困りました。
問題文を再現します。
1. 民法第896条は、次のように規定する(見出しは省略)。
(A)相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。(B)ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
この条文を読んだ上で、次の設問に答えなさい。
設問1 下線部(A)の部分を何というか。次の中から正しい言葉を選びなさい。
前段 後段 本文 第1項 ただし書き 第1号
設問2 下線部(B)の部分を何というか。次の中から正しい言葉を選びなさい。
前段 後段 第2項 第2号 ただし書き 副文
設問3 下線部(A)の「相続開始の時」の意味として正しいものを、次の中から選びなさい。
相続が開始したならば 相続が開始した場合には 相続が開始した時点
2.民法第900条を読み、次の設問に答えなさい。
(法定相続分)
第九百条 (C)同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。(D)ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
設問1 下線部(C)の部分を何というか。次の中から正しい言葉を選びなさい。
前段 後段 本文 柱書き 第1項 ただし書き(但書) 第1号
設問2 この条文中の漢数字の部分(一、二、三および四)を何というか。次の中から正しい言葉を選びなさい。
章 条 項 号 款 節 目
設問3 下線部(D)の部分は、第900条第4●▲▲という。正しく言葉を入れなさい。なお、●の部分には設問2で選択した言葉が入る。
設問4 下線部(C)の「とき」は、前問下線部(A)の「時」と同じ意味であるか。同じ意味であれば1を、違う意味であれば2を、解答用紙に記しなさい。
〔1.の解説〕
民法第896条では、下線部(B)の冒頭にある「ただし」が解答のヒントになります。
下線部(A)は「ただし」の前にありますので、本文が設問1の正解となります。
なお、「相続開始の時」を見ると、「時」という漢字が使われています。法律の条文では、「時」と「とき」は厳密に使い分けます。「時」は時点のことであり、英語であればat the timeです。これに対し、「とき」は仮定の意味で用いられるものであり、「〜である場合には」、「もし〜であるならば」という意味です。英語であればif、ドイツ語であればwennです(実際にそのような条文があります)。
したがって、設問3の正解は「相続が開始した時点」です。いつが開始の時点であるかについては、民法に定められていますので、条文を探してみてください。
下線部(B)は「ただし書き」です。設問2の正解は「ただし書き」です。
設問1で「前段」、設問2で「後段」と解答する人が時々見受けられますが、「ただし」が目にとまれば、このような誤答はないはずです。
〔2.の解説〕
私がこのブログで鉄道敷設法別表について「号」と正しく記したからかどうかはわかりませんが、最近では「項」と記された文献を見ることはなくなりました。しかし、項と号とを取り違える人は非常に多く、「法律学の基礎中の基礎なのに」と思っています。
民法第900条は、第2項以降がありません。この場合には第1項とは言いません。有斐閣のポケット六法や三省堂のデイリー六法では、第2項、第3項などであれば②、③などと付けてくれていますが、原文にはないはずです。理由は、ただの段落であるからです。
これに対し、漢数字で一、二、三などと書かれ、あれこれの事項などが列挙されています。この場合、前に「次の各号の」などと書かれていることが通常です。しかも、民法第900条はわざわざ解答者に正解を教えてくれているようなものです。
それなのに、第1号、第2号などを「第1項」、「第2項」などと書くのです。1年生の時点でしっかりと勉強していなかったのでしょうか。それとも、ただ条文をよく読んでいないだけでしょうか。
各号の前に書かれている文は柱書き(柱書でも可)と言います。したがって、設問1の正答は「柱書き」です。
設問2の正答が「号」であることは、もうおわかりでしょう。
設問3の正答は、第900条第4号ただし書きです。設問2で「号」を正しく選んでいれば、簡単に正答に至ります。なお、「号ただし書き」も正答とします。
設問4については、〔1.の解説〕も御覧ください。民法第900条柱書きの「とき」は平仮名で書かれていますから、漢字の「時」と意味が違うことは明らかです。仮に同じであるとすると「相続人が数人ある時点」という、訳のわからない文章に書き換えられることとなります。相続人が一人しかいないならば、各号の意味はなくなりますから、「相続人が数人あるとき」は「相続人が二人以上いるならば」の意味です。
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全然関係のない話ですが、漫画Peanutsに登場する、ちょっと面白い台詞を。
I'm not skinny..I'm trim.
I'm not fat! I'm roly-poly.
まさに、物は言い様です。
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