9月19日、ASEAN+3マクロ経済調査事務局(ASEAN+3 Macroeconomic Research Office:AMRO)は、2023年9月4日~14日にカンボジアで実施した年次協議の結果を発表しました。AMROは、この地域の経済・金融の監視・分析を行うとともに、ASEAN10か国と日本、中国、韓国による外貨融通の取り決め「チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)」の実施を支援するために設立された国際機関です。
カンボジアのGDP成長率については、2022年の5.2%から2023年5.3%、2024年6.2%と回復を続けると見ています。観光等のサービス産業の回復が見込まれる一方、縫製等の製造業は世界経済停滞の逆風を受けるとしています。カンボジア経済は、主要輸出先国の経済状況や、国際資源価格の動向等、海外要因に影響されやすいと指摘しています。
物価上昇率は、ウクライナ危機等の影響による国際資源価格・食料価格の高騰を受けて2022年には5.3%まで上昇しました。その後は落ち着き、2023年上半期には1.2%にまで下落しました。最近の国際資源価格の上昇の影響を受けるものの、2023年2.3%、2024年2.7%と安定的に推移すると見ています。
対外収支については、経常収支の赤字(対GDP比)は、2022年の25.7%から2023年第1四半期には1.9%にまで大幅に縮小しました。また、世界経済低迷の中でもカンボジアへの外国直接投資は堅調で、2022年対GDP比11.6%、2023年第1四半期14.7%となっています。
リスクとしては、外国直接投資や観光で重要な中国の経済停滞、主要な輸出先である欧米諸国の経済成長鈍化、国際資源・食糧価格の高騰等を挙げています。また、不動産セクターの長引くスランプと、その金融セクターへの影響もリスクとなっていると指摘しています。
政策提言としては、予見できないショックに備えるための財政余力の拡充を進言しています。また、中央銀行(NBC)の金融政策については、引き続き正常化の方向を継続すべきとしています。現地通貨リエルの信頼維持の観点から、外貨準備とのバランスをとりつつ、ドルとリエルの為替レートの安定を目指した為替介入も必要であると指摘しました。また、中央銀行の規制・監視が十分に浸透していないノンバンク等による不動産向け融資については、関係省庁が連携して監督を強化する必要があると提言しています。また、経済成長のモメンタムを維持するためにも引き続き改革・改善が必要であり、特に物流コストの低減が必要であると指摘しました。
AMROとCMIMは、アジア通貨危機の際の国際通貨基金(IMF)の対応が失敗続きであったために、日本が主導して設立したアジア版IMFです。2016年の設立協定発効以降、活動を本格化しており、アジアの視点に立った経済分析・監視を実施していくことが期待されます。
(写真は、AMROの発表より)
AMROの新聞発表(英文です)
https://amro-asia.org/cambodia-restoring-policy-space-and-diversifying-economy-essential-for-resilience-and-sustainable-growth/
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カンボジアのGDP成長率については、2022年の5.2%から2023年5.3%、2024年6.2%と回復を続けると見ています。観光等のサービス産業の回復が見込まれる一方、縫製等の製造業は世界経済停滞の逆風を受けるとしています。カンボジア経済は、主要輸出先国の経済状況や、国際資源価格の動向等、海外要因に影響されやすいと指摘しています。
物価上昇率は、ウクライナ危機等の影響による国際資源価格・食料価格の高騰を受けて2022年には5.3%まで上昇しました。その後は落ち着き、2023年上半期には1.2%にまで下落しました。最近の国際資源価格の上昇の影響を受けるものの、2023年2.3%、2024年2.7%と安定的に推移すると見ています。
対外収支については、経常収支の赤字(対GDP比)は、2022年の25.7%から2023年第1四半期には1.9%にまで大幅に縮小しました。また、世界経済低迷の中でもカンボジアへの外国直接投資は堅調で、2022年対GDP比11.6%、2023年第1四半期14.7%となっています。
リスクとしては、外国直接投資や観光で重要な中国の経済停滞、主要な輸出先である欧米諸国の経済成長鈍化、国際資源・食糧価格の高騰等を挙げています。また、不動産セクターの長引くスランプと、その金融セクターへの影響もリスクとなっていると指摘しています。
政策提言としては、予見できないショックに備えるための財政余力の拡充を進言しています。また、中央銀行(NBC)の金融政策については、引き続き正常化の方向を継続すべきとしています。現地通貨リエルの信頼維持の観点から、外貨準備とのバランスをとりつつ、ドルとリエルの為替レートの安定を目指した為替介入も必要であると指摘しました。また、中央銀行の規制・監視が十分に浸透していないノンバンク等による不動産向け融資については、関係省庁が連携して監督を強化する必要があると提言しています。また、経済成長のモメンタムを維持するためにも引き続き改革・改善が必要であり、特に物流コストの低減が必要であると指摘しました。
AMROとCMIMは、アジア通貨危機の際の国際通貨基金(IMF)の対応が失敗続きであったために、日本が主導して設立したアジア版IMFです。2016年の設立協定発効以降、活動を本格化しており、アジアの視点に立った経済分析・監視を実施していくことが期待されます。
(写真は、AMROの発表より)
AMROの新聞発表(英文です)
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