12月31日、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行(NBC)は、「2021年のマクロ経済と銀行セクター開発及び2022年の展望」と題する報告書を発表しました。
2021年のマクロ経済については、中国人による2月20日市中感染事件の影響が大きく、ロックダウンによる経済活動停滞により、中小企業や観光業の困難な状況が続き、世帯所得にも影響したと分析しています。しかし、ワクチン接種の成功(国民の約90%)により、経済の再開と回復が始まり、世界経済の回復傾向と相まって、2021年のGDP成長率は3%程度となったとしています。縫製業の回復、縫製品以外の輸出堅調、農業生産の安定等が成長回復に貢献しましたが、観光業の不振は継続しています。国際収支は、輸入が増加したものの、海外直接投資が前年比2.5倍に増加したこともあり、外貨準備は安定的なレベルを維持しています。なお、2021年後半にリエルの減価の懸念もあり、NBCは為替市場に介入しました。5億ドル(約575億円)の介入により、4099リエル/ドルの目標レート近辺で為替レートは安定しました。為替の安定もあって、物価も安定的で、物価上昇率は2.9%に留まりました。国際原油市場の価格上昇はありましたが、食品価格やコア指数は下落となっています。
銀行セクターは、NBCによる十分な流動性供給もあって堅調に貸付を伸ばし、残高は対前年比21.2%増の457億ドルとなりました。預金も対前年比15.4%増の385億ドルに増加しています。新型コロナで困難な状況となった借入人に対する貸付条件緩和は、37万785人・社の総額55億ドルに対し実施されました。また、新型コロナの影響もあって、電子支払・送金も大幅に伸びており、中央銀行デジタル通貨のバコンも一定の役割を果たしたと見られます。
2022年の展望については、変異型ウイルスの懸念は残るものの、世界経済が回復傾向にあるため、カンボジアからの輸出も、縫製品、電子部品、自転車等を主力として増加が見込まれます。建設・不動産業は、海外直接投資の回復に伴い、緩やかな回復が期待されます。観光業の不振は、長引く可能性があるとしています。この結果、2022年のGDP成長率は5%程度、物価上昇率は2.6%、為替レートは4075リエル/ドルと予測しています。なお、RCEP等の自由貿易協定や経済のデジタル化等に期待を示しました。
リスクとしては、米国等の金融緩和出口政策によるドル金利上昇とドルの増価により、新興国からの資金流出、新興国の為替レート不安定化の懸念があるとしています。カンボジアの場合、リエルがドルにペッグしているため、リエルが実力以上に評価されて輸出に悪影響を与える可能性もあると懸念しています。また、変異型等による新型コロナの感染継続、中小企業や家計の債務、中国不動産問題のカンボジア不動産業への波及、気候変動等もリスクとして指摘しています。政策課題としては、国際競争力の強化、インフラの拡充、経済基盤の多様化、リエルの使用促進、中小企業の金融アクセス改善等を挙げました。なお、今年、初の発行が予定されている国債について、政府の資金調達だけでなく、リエル建て資金運用手段の提供、中央銀行の金融調節手段となること等の効果も期待しているとしています。
(写真は、2021年4月24日撮影。ロックダウンで人影が消えたプノンペン中心部)
カンボジア国立銀行のフェイスブック(クメール語・英語)
https://web.facebook.com/nationalbankofcambodiaofficial/posts/4315566765220209
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2021年のマクロ経済については、中国人による2月20日市中感染事件の影響が大きく、ロックダウンによる経済活動停滞により、中小企業や観光業の困難な状況が続き、世帯所得にも影響したと分析しています。しかし、ワクチン接種の成功(国民の約90%)により、経済の再開と回復が始まり、世界経済の回復傾向と相まって、2021年のGDP成長率は3%程度となったとしています。縫製業の回復、縫製品以外の輸出堅調、農業生産の安定等が成長回復に貢献しましたが、観光業の不振は継続しています。国際収支は、輸入が増加したものの、海外直接投資が前年比2.5倍に増加したこともあり、外貨準備は安定的なレベルを維持しています。なお、2021年後半にリエルの減価の懸念もあり、NBCは為替市場に介入しました。5億ドル(約575億円)の介入により、4099リエル/ドルの目標レート近辺で為替レートは安定しました。為替の安定もあって、物価も安定的で、物価上昇率は2.9%に留まりました。国際原油市場の価格上昇はありましたが、食品価格やコア指数は下落となっています。
銀行セクターは、NBCによる十分な流動性供給もあって堅調に貸付を伸ばし、残高は対前年比21.2%増の457億ドルとなりました。預金も対前年比15.4%増の385億ドルに増加しています。新型コロナで困難な状況となった借入人に対する貸付条件緩和は、37万785人・社の総額55億ドルに対し実施されました。また、新型コロナの影響もあって、電子支払・送金も大幅に伸びており、中央銀行デジタル通貨のバコンも一定の役割を果たしたと見られます。
2022年の展望については、変異型ウイルスの懸念は残るものの、世界経済が回復傾向にあるため、カンボジアからの輸出も、縫製品、電子部品、自転車等を主力として増加が見込まれます。建設・不動産業は、海外直接投資の回復に伴い、緩やかな回復が期待されます。観光業の不振は、長引く可能性があるとしています。この結果、2022年のGDP成長率は5%程度、物価上昇率は2.6%、為替レートは4075リエル/ドルと予測しています。なお、RCEP等の自由貿易協定や経済のデジタル化等に期待を示しました。
リスクとしては、米国等の金融緩和出口政策によるドル金利上昇とドルの増価により、新興国からの資金流出、新興国の為替レート不安定化の懸念があるとしています。カンボジアの場合、リエルがドルにペッグしているため、リエルが実力以上に評価されて輸出に悪影響を与える可能性もあると懸念しています。また、変異型等による新型コロナの感染継続、中小企業や家計の債務、中国不動産問題のカンボジア不動産業への波及、気候変動等もリスクとして指摘しています。政策課題としては、国際競争力の強化、インフラの拡充、経済基盤の多様化、リエルの使用促進、中小企業の金融アクセス改善等を挙げました。なお、今年、初の発行が予定されている国債について、政府の資金調達だけでなく、リエル建て資金運用手段の提供、中央銀行の金融調節手段となること等の効果も期待しているとしています。
(写真は、2021年4月24日撮影。ロックダウンで人影が消えたプノンペン中心部)
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