英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

竜王戦第1局を観て

2013-10-26 22:45:22 | 将棋
ssayさん記事にコメントしようと思ったのですが、長くなりそうなので記事にします)
 竜王戦第1局は森内名人が先勝、10期ぶりの返り咲きと2大タイトル制覇に向けて好発進した。
 が、渡辺竜王も後手番を落としただけなので、先手後手で1セットと考えれば想定内の敗戦で、勝負は第2局以降と考えられる。

 第1局は2日目午前中、森内名人が先手番ながら≪千日手も仕方なし≫の自重手順を選択した。その数手前の▲3八飛は△2六銀(封じ手・第2図)を誘い、

▲7五銀△7四歩の時に▲4六角を可能にしている。▲4六角がないと▲7五銀△7四歩に▲同銀と取れない(△7三歩で銀が死ぬ)。
 封じ手の△2六銀は有力手だったので、森内名人も前夜、充分対策を練ったはずだが、誤算があったのだろうか?
 後手番の渡辺竜王は残り時間も多く、指し直し局は先手番になるので千日手歓迎かと思えた。
 この辺りの思惑は、『渡辺明ブログ』によると「2日目は朝から千日手の権利が生じました。歩得なので行けるような気がしましたが、千日手を打開するほどの手順ではありませんでした。以降は苦しくしてしまい、チャンスがほとんどない将棋でした」とある。
 また、中継の解説では「渡辺は封じ手の場面でも△5三金を考えていたそうで、ここで金を上がれて(第3図)得したと感じたという」とあり、自信の打開だったようだ。

 この金は4四、4五と進出した。渡辺竜王は「玉の堅さ優先」というイメージが強いが、玉頭の厚みも割と好きなように思われる。そして、このような金の中段への進出も好きなように感じる。
 その後、渡辺竜王らしくない(弱気な?)金引き(第4図)で、森内名人ペースとなった。


 森内名人の強気の受け、その鋼鉄の城門をこじ開けようとする竜王執拗な攻めの攻防が続き、名人に小ミスがあり、一瞬あわやという局面まで迫ったがそこで竜王も誤り、森内名人が押し切った。


 一局を通して見ると、お互いの特長が出た将棋で、調子はまずまずのように思われる。ただ、若干のミスが出ているので絶好調とは言えない。特に、森内名人は名人戦で「勝つ気がしない」と羽生ファンを意気消沈させた時ほどの強さは感じられない。
 王座戦では苦戦したが、その他の棋戦では圧倒的な強さを示している羽生三冠がああまで叩きのめされたのは今でも信じられない。悪夢である。(対森内、対中村戦を除くと20勝4敗 .833)

 ここで注目したいのは、

後手番の渡辺竜王が取った矢倉△5三銀右急戦は、あの3連敗4連勝の竜王戦大逆転の原動力となった戦法で、その竜王戦を含めて7勝2敗という好成績。後手番であることを考慮すると、渡辺竜王の後手番での「切り札」と言えよう。
 その切り札を第1局から切った。これは何を意味するのだろうか?
 ひとつの解釈として、「調子がイマイチなので、後手番の第1局を是が非でも勝って優位にシリーズを戦いたい」という思惑。
 もう一つは、「矢倉△5三銀右急戦は森内名人に対策を練られていると考えられるので、もはや切り札とは言えない。ここは、まず、矢倉△5三銀右急戦で森内名人の対策や強さの感触を確かめよう」
 竜王戦7番勝負開幕前の竜王の負けの多さは、「手の内を隠す」とまでは言えないが、竜王位防衛を第一と考えた影響なのではないだろうか。となると、竜王は「新切り札」を複数用意しているとも考えられる。

 王座防衛も果たし三冠を堅持、順位戦も快調、冬のタイトル挑戦も視野に入ってきた。竜王戦に出ないのは寂しく悔しいが、気楽に観戦でき、高みの見物。好勝負が期待され、楽しみな将棋の秋である。
コメント (8)
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