英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

女流3題 「その1」

2016-07-05 23:59:18 | 将棋
 実は、タイトルに使用した「女流」という表記には抵抗がある。
 一般的に「女流棋士」「女流作家」「女流歌人」などの言葉は認知されているようだ。その表現の裏には、女性の専門家(実演者)が少ない状況の分野で、“稀有”な存在の女性を強調する意味が含まれているようである。
 女性の比率がある程度高い分野(最近は女性の比率が低い分野の方が珍しいかも)、例えばスポーツでは「女性アスリート(選手)」、マスコミでは「女性アナウンサー(女子アナ)」というように「女性」と表現しており、単に「男性」「女性」を区別しているだけの意味合いが強い。(スポーツの場合は、女性が少ない競技もあるが、はっきり性別で区別されているので「女性選手」と表現されている)
 それと、(私の主観ではあるが)作家に関しては、現状では女性の比率がかなり高いように思われるが、「女流作家」という言い回しが一般的になっているので、それを踏襲しているのではないかと考えられる。

 本来「流」には、「〇△流」というように、固有の流儀や手法をもって区別する意味がある。
 しかし、将棋や囲碁においてもも執筆や創作においても、女性特有のルールや流儀や手法があるわけではない。なのに、敢えて使用しているのは、「珍しい」とか「男性プロには劣る」という多少見下した気持ちがあったと推測される。その意味で「女流」を差別用語とする向きもある。

 そんなわけで、「女流棋士」という表現には抵抗を感じているのである。

 しかし、里見香奈三段(女流四冠)や西山萌佳三段が奨励会で昇段していき、三段リーグに参加し、四段(プロ棋士)目前となると、「女性として初の棋士誕生か」と言われるようになった。その際、「女性棋士」という表現がされることがあるようだ。まあ、これは既に用語として「女流棋士」が存在しているので、「女流棋士誕生か?」と表記するのは変なので、当然と言えば当然である。
 けれども、仮に「女流棋士」という表現が存在しなくても、現代の風潮なら「女流棋士誕生か」ではなく「女性棋士誕生」という表記になるのではないだろうか?

 それはともかく、「女性棋士」が現実味を帯びてくると、「女性棋士」>「女流棋士」という図式が明確になってくる。
 
 里見さんにしても西山さんにしても(また他の女性奨励会員も)、性別の区別は全くなく対局してきたのだから、四段になったとしても、ことさら女性を強調して「女性棋士」と表現する必要はないのであるが、四段昇段の際には「女性棋士」という表記が乱舞するだろう。
 そこで、この「女性棋士」が定着してしまうと、ややこしいことになる。現在の女流棋士が女性であることは自明の事実だが、『女性でありながら「女性棋士」と呼べない』事態になってしまう……言葉遊びのような論議になってしまった……

 閑話休題
 「棋士としては棋力が足りないが、“将棋が強い女性”という意味で存在価値は大きい」という考えから、女流棋士が誕生した。
 そういう思想が根底にあり、その棋力が高くなってきたとはいえ、やはり男性の棋士には及ばないという現状である。棋士とは一線を画して“女流棋士”と呼称されるのは仕方がないと言える。また、現在の「女性限定で“棋士”と区別が必要不可欠なシステム」では、“女流棋士”という呼称はなくならないであろう。
 しかし、“女流棋士”という表現がなくならないにしても、今後、一般棋戦やタイトル戦で男性棋士と伍して戦うことができれば、一種の差別的な意味合いは薄れ、単なる便宜上の呼称に変えていくことは可能である。現に、現在の女流棋士のレベルは相当高くなってきている(アマチュアを含めて)。



 で、ようやく、本題。
第6期リコー杯女流王座戦二次予選から3局

★斎田晴子女流五段 対 長谷川優貴女流二段

 相振り飛車戦、虚々実々の応酬が感じられる第0図。
 戦いの主導権は長谷川女流二段が握っていたが、4筋に2枚の成駒を作った斎田女流五段が押し返した流れ。
 しかし、図の△3七歩が、その流れを押し留める手裏剣。金や銀、あるいは玉で取れば、取りが掛かっている3三の桂が先手で逃げられる。また、▲3七同桂は△3五歩が嫌味だ。▲3五同歩で後手が歩切れで後続手がないように思えるが、△2六飛▲同歩△3六桂の勝負手がある。
 実戦は▲3七同銀△4五桂と進む。ここで、▲5三とと攻め合えば先手に分がある戦いだったが、▲5三とを楽しみに、一旦、▲4六銀上とかわす。この方が確実に見える。

 そんな斎田女流五段の思惑を後悔に変えたのが、長谷川女流二段の次の一手だった。
【続く】
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