英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

女流3題 「その3」

2016-07-18 12:06:19 | 将棋
「その1」「その2」 の続きです。
(本記事の図面で対局者が「先手」「後手」と表示されていますが、先手は今井奨励会6級、後手は山根女流初段です)

2題目(2局目)
第6期リコー杯女流王座戦二次予選
★今井絢奨励会6級 対 山根ことみ女流初段

 昭和の香りがする居飛車対振り飛車の図。
 先手の今井奨励会6級が▲8七銀と銀冠に組み替えを図ったところ。
 銀冠は強固な囲いだが、この銀を上がった瞬間が金銀3枚がバラバラになり、仕掛けられるのを警戒しなければならない(振飛車側の組み替えも同様)。
 今井奨励会6級は手慣れた戦型なのか、直前の▲8六歩までは考えても2分で通計16分の考慮時間(チェスクロック使用)。そして、この▲8七銀も2分の考慮だった。
 しかし、後手が4四銀型で先手は角が3七にいる状態なので、この瞬間、△3五歩と仕掛けられる危険が大きい。それを2分の考慮で指すとは、よほど経験がある戦型なのか、迂闊なのか……


 山根女流初段は6分半の考慮で△3五歩と仕掛ける。

【以下、中継サイトの解説を引用】=======
6分半以上考えて、△3五歩と仕掛けた。

※局後の感想※
ここで△3五歩が機敏な仕掛けで、山根がペースを握った。対して本譜の▲3五同歩に代えて▲2六飛は、次に▲3五歩と取れるわけではなく後手ペース。山根はここで▲3八飛を本命視しており、以下△3二飛▲7八金△2二角▲2六角△3六歩▲2四歩△同歩▲2八飛△3四飛▲4六歩は、後手に不満はないものの、勝負としてはまだまだの戦いだった。
=========【引用終わり】

 “機敏な仕掛け”と言うより“当然の仕掛け”
 しかし、それで決定的に形勢が離れるという訳ではなく、引用した解説通り、“まだまだの戦い”が続くはずだった。
 ただ、△3五歩に対して、取りあえず▲7八金と締まりたい。△3六歩と取りこまれるが▲2六角で意外と難しい。先手から次に▲3八飛として3六に歩を取り返す手段があり、これがすんなり実現できれば先手が良くなる。
 △2四歩には▲同歩で大丈夫そう。△2二角と引いて△3二飛を用意する手や、△5五歩と戦線拡大する手が有力で、後手ペースになりそうだが、互角に近い戦いが望める。
 ところが……


 7分の考慮で▲3五同歩
 銀冠が完成していても▲3五同歩とは取りにくいはずだが、たった7分の考慮で戦える見通しを立てたのだろうか?

【引用】========
対して7分以上考えて▲3五同歩と応じる。代えて▲2六飛と浮いて銀を進出させない順も、考えられるところだった。

※局後の感想※
この▲3五同歩が躓きの始まり。このあと今井に大きな見落としがあった。
========【引用終わり】


 見落としがあったというが、▲3五同歩と取って△3五銀と進出させる感覚に、大きな疑問を感じる。

 さらに、1分の考慮で▲6五歩
【引用】========
「この手を突いた瞬間に△6五同桂があることに気づきました」(今井)
期待の反撃だったが、△6五同桂と応じられ、傷口を広げる結果となった。
========【引用終わり】




 ここまで通計で26分の考慮。持時間は3時間あり、少なくとも3度は腰を落ち着けて熟考すべき個所があったというのに。
 成立の可能性はあるものの不用意な▲8七銀(2分)。
 将棋の筋としてはあり得ない▲3五同歩(7分)。
 完全な見落としの▲6五歩(1分)。


 第6図以下▲6八飛(9分、悪手)△4六歩▲同歩△3六歩▲2八角△7七桂成▲同金△同角成▲同玉△6五桂(第7図)。

 △6五桂は11時39分の着手。
 このまま昼食休憩に入ったが、今井奨励会6級は食事はまずかっただろう。
 以後は24手指し継がれたが、指してみただけの手順。

「その4」
コメント (4)
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