「その1」、「その2」 の続きです。
(本記事の図面で対局者が「先手」「後手」と表示されていますが、先手は今井奨励会6級、後手は山根女流初段です)
2題目(2局目)
第6期リコー杯女流王座戦二次予選
★今井絢奨励会6級 対 山根ことみ女流初段
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/d2/bb44e9ed883ca8f70f1fb87f4470b607.png)
昭和の香りがする居飛車対振り飛車の図。
先手の今井奨励会6級が▲8七銀と銀冠に組み替えを図ったところ。
銀冠は強固な囲いだが、この銀を上がった瞬間が金銀3枚がバラバラになり、仕掛けられるのを警戒しなければならない(振飛車側の組み替えも同様)。
今井奨励会6級は手慣れた戦型なのか、直前の▲8六歩までは考えても2分で通計16分の考慮時間(チェスクロック使用)。そして、この▲8七銀も2分の考慮だった。
しかし、後手が4四銀型で先手は角が3七にいる状態なので、この瞬間、△3五歩と仕掛けられる危険が大きい。それを2分の考慮で指すとは、よほど経験がある戦型なのか、迂闊なのか……
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/5b/40590bfdcba656ab71aac3056fc972e9.png)
山根女流初段は6分半の考慮で△3五歩と仕掛ける。
【以下、中継サイトの解説を引用】=======
6分半以上考えて、△3五歩と仕掛けた。
※局後の感想※
ここで△3五歩が機敏な仕掛けで、山根がペースを握った。対して本譜の▲3五同歩に代えて▲2六飛は、次に▲3五歩と取れるわけではなく後手ペース。山根はここで▲3八飛を本命視しており、以下△3二飛▲7八金△2二角▲2六角△3六歩▲2四歩△同歩▲2八飛△3四飛▲4六歩は、後手に不満はないものの、勝負としてはまだまだの戦いだった。
=========【引用終わり】
“機敏な仕掛け”と言うより“当然の仕掛け”
しかし、それで決定的に形勢が離れるという訳ではなく、引用した解説通り、“まだまだの戦い”が続くはずだった。
ただ、△3五歩に対して、取りあえず▲7八金と締まりたい。△3六歩と取りこまれるが▲2六角で意外と難しい。先手から次に▲3八飛として3六に歩を取り返す手段があり、これがすんなり実現できれば先手が良くなる。
△2四歩には▲同歩で大丈夫そう。△2二角と引いて△3二飛を用意する手や、△5五歩と戦線拡大する手が有力で、後手ペースになりそうだが、互角に近い戦いが望める。
ところが……
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/14/7bac1e610dd9988763a5adf2a022acd4.png)
7分の考慮で▲3五同歩。
銀冠が完成していても▲3五同歩とは取りにくいはずだが、たった7分の考慮で戦える見通しを立てたのだろうか?
【引用】========
対して7分以上考えて▲3五同歩と応じる。代えて▲2六飛と浮いて銀を進出させない順も、考えられるところだった。
※局後の感想※
この▲3五同歩が躓きの始まり。このあと今井に大きな見落としがあった。
========【引用終わり】
見落としがあったというが、▲3五同歩と取って△3五銀と進出させる感覚に、大きな疑問を感じる。
さらに、1分の考慮で▲6五歩。
【引用】========
「この手を突いた瞬間に△6五同桂があることに気づきました」(今井)
期待の反撃だったが、△6五同桂と応じられ、傷口を広げる結果となった。
========【引用終わり】
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/c6/ca17ddd9f052458feb0247a6bdccc8d5.png)
ここまで通計で26分の考慮。持時間は3時間あり、少なくとも3度は腰を落ち着けて熟考すべき個所があったというのに。
成立の可能性はあるものの不用意な▲8七銀(2分)。
将棋の筋としてはあり得ない▲3五同歩(7分)。
完全な見落としの▲6五歩(1分)。
第6図以下▲6八飛(9分、悪手)△4六歩▲同歩△3六歩▲2八角△7七桂成▲同金△同角成▲同玉△6五桂(第7図)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/47/f8504ffef351a264417acb8c15d18d8a.png)
△6五桂は11時39分の着手。
このまま昼食休憩に入ったが、今井奨励会6級は食事はまずかっただろう。
以後は24手指し継がれたが、指してみただけの手順。
「その4」
(本記事の図面で対局者が「先手」「後手」と表示されていますが、先手は今井奨励会6級、後手は山根女流初段です)
2題目(2局目)
第6期リコー杯女流王座戦二次予選
★今井絢奨励会6級 対 山根ことみ女流初段
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/d2/bb44e9ed883ca8f70f1fb87f4470b607.png)
昭和の香りがする居飛車対振り飛車の図。
先手の今井奨励会6級が▲8七銀と銀冠に組み替えを図ったところ。
銀冠は強固な囲いだが、この銀を上がった瞬間が金銀3枚がバラバラになり、仕掛けられるのを警戒しなければならない(振飛車側の組み替えも同様)。
今井奨励会6級は手慣れた戦型なのか、直前の▲8六歩までは考えても2分で通計16分の考慮時間(チェスクロック使用)。そして、この▲8七銀も2分の考慮だった。
しかし、後手が4四銀型で先手は角が3七にいる状態なので、この瞬間、△3五歩と仕掛けられる危険が大きい。それを2分の考慮で指すとは、よほど経験がある戦型なのか、迂闊なのか……
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/5b/40590bfdcba656ab71aac3056fc972e9.png)
山根女流初段は6分半の考慮で△3五歩と仕掛ける。
【以下、中継サイトの解説を引用】=======
6分半以上考えて、△3五歩と仕掛けた。
※局後の感想※
ここで△3五歩が機敏な仕掛けで、山根がペースを握った。対して本譜の▲3五同歩に代えて▲2六飛は、次に▲3五歩と取れるわけではなく後手ペース。山根はここで▲3八飛を本命視しており、以下△3二飛▲7八金△2二角▲2六角△3六歩▲2四歩△同歩▲2八飛△3四飛▲4六歩は、後手に不満はないものの、勝負としてはまだまだの戦いだった。
=========【引用終わり】
“機敏な仕掛け”と言うより“当然の仕掛け”
しかし、それで決定的に形勢が離れるという訳ではなく、引用した解説通り、“まだまだの戦い”が続くはずだった。
ただ、△3五歩に対して、取りあえず▲7八金と締まりたい。△3六歩と取りこまれるが▲2六角で意外と難しい。先手から次に▲3八飛として3六に歩を取り返す手段があり、これがすんなり実現できれば先手が良くなる。
△2四歩には▲同歩で大丈夫そう。△2二角と引いて△3二飛を用意する手や、△5五歩と戦線拡大する手が有力で、後手ペースになりそうだが、互角に近い戦いが望める。
ところが……
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/14/7bac1e610dd9988763a5adf2a022acd4.png)
7分の考慮で▲3五同歩。
銀冠が完成していても▲3五同歩とは取りにくいはずだが、たった7分の考慮で戦える見通しを立てたのだろうか?
【引用】========
対して7分以上考えて▲3五同歩と応じる。代えて▲2六飛と浮いて銀を進出させない順も、考えられるところだった。
※局後の感想※
この▲3五同歩が躓きの始まり。このあと今井に大きな見落としがあった。
========【引用終わり】
見落としがあったというが、▲3五同歩と取って△3五銀と進出させる感覚に、大きな疑問を感じる。
さらに、1分の考慮で▲6五歩。
【引用】========
「この手を突いた瞬間に△6五同桂があることに気づきました」(今井)
期待の反撃だったが、△6五同桂と応じられ、傷口を広げる結果となった。
========【引用終わり】
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/c6/ca17ddd9f052458feb0247a6bdccc8d5.png)
ここまで通計で26分の考慮。持時間は3時間あり、少なくとも3度は腰を落ち着けて熟考すべき個所があったというのに。
成立の可能性はあるものの不用意な▲8七銀(2分)。
将棋の筋としてはあり得ない▲3五同歩(7分)。
完全な見落としの▲6五歩(1分)。
第6図以下▲6八飛(9分、悪手)△4六歩▲同歩△3六歩▲2八角△7七桂成▲同金△同角成▲同玉△6五桂(第7図)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/47/f8504ffef351a264417acb8c15d18d8a.png)
△6五桂は11時39分の着手。
このまま昼食休憩に入ったが、今井奨励会6級は食事はまずかっただろう。
以後は24手指し継がれたが、指してみただけの手順。
「その4」